H30年度に得られた成果は以下の通りである. (a) 流動性の調査:前年度までに,木粉の流動性を活性化する成分として,糖類およびクエン酸に着目し,それらを混合した木粉の流動性について調査を行ってきた.本年度は,木粉の粒子サイズが流動性に及ぼす影響について,より詳細な検討を行った.その結果,木粉の流動性を高めるにあたっては,適正な粒子サイズが存在し,粒子サイズを流路径の1.5倍程度に設定すると,高い流動性を示すことがわかった.さらに,木粉が流路に流入する際の様子を観察することによって,粒子が流動時に破砕している様子を確認した. (b) 射出成形性の調査:前年度までに,バインダとして糖類およびクエン酸を混合した木粉の射出成形を実施し,成形が可能であることを確認した.本年度は,成形性,強度および耐水性を最大限に高めるための適正条件(バインダ混合率,およびバインダ成分配合比[S(糖):C(クエン酸)])を調査した.その結果,成形性,強度および耐水性を両立可能な適正バインダ成分配合比S:Cは75:25程度,適正バインダ混合率は40 ~ 50 wt%程度であることがわかった.上記の条件にて作製したプレートの密度は1.4~1.5 g/cm^3,曲げ強度は28~37 MPa,吸水厚さ膨張率は7~10 %であり,JISに規定されている木質プラスチックやファイバーボードの値に匹敵した. (c) 高圧蒸煮プレス:前年度までに,改質木質ビレットを作製するための高圧蒸煮プレス用の金型の作製を完了した.本年度は作製した金型を用いた実験を実施した.高圧蒸煮プレスによって作製した改質木質ビレットの流動性を調査したところ,大幅な流動性の向上は認められなかった.高圧蒸煮プレス時の金型温度,保持時間および水分量が重要であると考えられ,より適正な高圧蒸煮プレス条件の検討や,改質木質ビレットの成分分析を進めている.
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