研究課題/領域番号 |
16K18266
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
Xu Chao 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (00774184)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | LPSO相 / 結晶粒微細化 / 時効析出 / 押出加工 / 集合組織 |
研究実績の概要 |
Mg-Gd-Y-Al基合金押出し材に高強度と高延性を付与するためには、結晶粒微細化剤として働くAl2Gdや強化相として有効なβ’相・LPSO相の微細かつ高密度な分散が必要である。平成28年度は、上述のAl2Gdやβ’相・LPSO相が微細かつ高密度に分散するための合金組成や熱処理条件を把握するために、以下の系統的な研究を行った。 [鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率に及ぼすAl添加量の影響]:Mg-Gd-Y-Zn-Mn合金に、0.2~1.0%のAlを添加した合金を溶製し、鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率に及ぼすAl添加量の影響を調べた。Al添加量を増やすにつれ、結晶粒微細化剤として働くAl2Gdの体積率が増え、鋳造材の結晶粒径は顕著に微細化する。Al添加量が0.5%の場合、Al2Gdの直径を10μm以下に抑えることに成功し、鋳造材の結晶粒径を100μm以下にまで微細化できることが分かった。 [鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率に及ぼすZn添加の影響]:鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率に及ぼすZn添加の影響を調べるため、Mg-Gd-Y-Al-Mn合金に0~0.5%のZnを添加した合金を溶製した。Znを添加した合金は、Al2Gdを核としてもLPSO相が形成する。また、Znを含むLPSO相は溶体化処理後でも固溶せず、高温でも安定であることが分かった。 [検討合金の時効硬化特性に及ぼすAl添加量やZn添加の影響]:Mg-Gd-Y-(Zn)-(Al)-Mn合金に溶体化処理を施し、200°Cでの時効硬化特性を調べた。Al添加量を増やすとAl2Gdの体積率が増加するため、時効硬化特性は若干低下する。Znの添加でも、時効硬化特性は低下するが、AlとZnを含むMg-Gd-Y-Zn-Al-Mn合金でも、△HV=約40の十分な時効硬化を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画した実験・観察をバランスよく行い、鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率、時効硬化特性に及ぼすAl添加量やZn添加の影響を系統的に調べた。各研究項目の達成度は、以下の通りである。 [鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率に及ぼすAl添加量の影響]:微細なAl2Gdが分散し、鋳造材の結晶粒径を十分に微細化できるAl添加量の最適値を明らかにした。 [鋳造材の結晶粒径や第2相の種類・サイズ・体積率に及ぼすZn添加の影響]:十分な体積率のLPSO相が分散するためには、Znの添加が有効であることを明らかにした。またZnを含むLPSO相は高温でも安定的に存在することを発見し、Znの添加が良好な高温特性の付与に有効である可能性を示した。さらに、Znを添加すると、Al2GdがLPSO相の核として働くため、AlとZnの同時添加が、高温でも安定なLPSO相の体積率を増やし、高強度・耐熱性を付与できる可能性も示した。 [検討合金の時効硬化特性に及ぼすAl添加量やZn添加の影響]:△HV=約40の十分な時効硬化を付与できるAlとZn添加量を明らかにした。 上述のように、平成28年度には、鋳造材の結晶粒径を微細化でき、Al2Gdやβ’相・LPSO相が微細に分散する合金組成を明らかにしたことに加え、平成29年度にて検討する押出し加工時の変形メカニズムやヘテロ構造型Mg合金押出し材の機械的性質もすでに調べ始めており、押出し材の結晶粒微細化メカニズムやヘテロ構造形成メカニズム、押出し材の強化メカニズムに関しても、具体的な成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に、鋳造材の結晶粒径を十分に微細化でき、Al2Gdやβ’相・LPSO相の微細・高密度分散に必要な添加合金元素量は明らかにした。平成29年度は、添加合金元素量を最適化した合金を用いて押出し加工に供し、超高強度・高延性・高耐熱性を有するMg-Gd-Y-Al基合金押出し材の開発を狙う。具体的な実施項目は、以下の通りである。 [Mg-Gd-Y-Al基合金押出し材の機械的性質に及ぼす組織因子の影響解明]:平成28年度に抽出した検討合金に様々な条件の熱処理や押出し加工を施し、結晶粒径や未再結晶率、第2相のサイズ・体積率の異なる押出し材を創る。これらの押出し材の室温・高温での機械的性質と組織因子の定量的な関係を詳細に調べ、超高強度・高延性・高耐熱性を付与できる組織因子を抽出する。 [Mg-Gd-Y-Al基合金押出し材の組織因子に及ぼすプロセス条件の影響解明]:平成28年度に抽出した検討合金に様々な条件の熱処理や押出し加工を施し、押出し材の結晶粒径や未再結晶率、第2相のサイズ・体積率を詳細に調べ、再結晶粒の形成メカニズムや結晶粒微細化メカニズム、β’相・LPSO相の微細かつ高密度分散メカニズムを明らかにする。また、平成29年度に明らかにする超高強度・高延性・高耐熱性の付与に必要な組織因子を具現化するためのプロセス条件最適化も行う。 これらの系統的な研究を実施し、Mg-Gd-Y-Al基合金押出し材のプロセス条件-組織因子-機械的性質の定量的な関係を明らかにすることで、原理・原則に基づき、超高強度・高延性・高耐熱性を示すMg-Gd-Al基合金の最適組成やプロセス条件を提案する。
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