本研究では新規Co回収プロセスの各工程について、その詳細を定量化してプロセスの成立性を確認し、具体的なプロセス条件を決定するための指針を得ることを目的とした研究を行っている。平成28年度はゲル状化合物の析出によるCo分離条件について、ゲル化剤の濃度条件を明らかにした。平成29年度は、ゲル状化合物回収後の溶媒抽出工程に着目し、ゲル化剤が溶媒抽出工程に与える影響について予備的な調査を行った。平成30年度はこれに引き続き、ゲル再溶解後の水溶液を、溶媒抽出を経てCo電解採取に持ち込む際の、ゲル由来の不純物の影響を調査した。具体的には下記の調査を行った。 <溶媒抽出工程> 抽出剤としてD2EHPAまたはPC88Aを、希釈剤としてキシレンまたはケロシンを用いて溶媒抽出工程におけるCoとNiの分離性について調査した。PEGおよびチオシアン酸イオンの存在する条件においても抽出実験を行い、CoおよびNiの抽出曲線から各条件において分離係数を算出した。さらに、SCN-およびPEGの有機溶媒相/水溶液相間における分配を調査し、電解工程に混入する不純物濃度を推算した。 <Co電解採取工程> SCN-およびPEGがCoの電解採取に与える影響を調査した。分極曲線の取得により、不純物の共存がCoの還元反応に与える影響を調査した。プロセスの最終段階を模擬した条件として、不純物濃度を変化させた電解浴を用いてCoの分極曲線を取得し、得られる金属Coの表面を観察した。 研究機関全体を通して、本研究で提案したCoの回収プロセスを実現する際のプロセス条件について基本的な知見を得ることができた。ただし、溶媒抽出工程ではゲル由来のPEGやチオシアン酸イオンを、Co電解に影響しないレベルに抑えることが困難であり、これら不純物の除去プロセスを設ける、または電解採取以外の方法でCoを採取する、などの対策が必要である。
|