平成29年度は,前年度に引き続き,超臨界二酸化炭素法によるメソポーラスシリカへの薬剤の担持・吸着装置を用いて,モデル担体を最も汎用的に用いられているメソポーラスシリカであるMCM-41として,本研究課題の目的である超臨界法によるナノDDS(ドラッグデリバリーシステム)キャリア創製プロセスの設計へ向けた基礎的検討を実施した. まず,モデル薬剤をドラッグデリバリーシステムへの応用が望まれている代表的な難水溶性の非ステロイド性抗炎症物質であるイブプロフェンモデルとして,温度313~343 K,圧力15.0 MPaの条件にて薬剤の担持・吸着実験を行った上で熱重量分析(TGA)による定量を実施したところ,メソポーラスシリカ細孔内へのイブプロフェン導入量は約 12 hで飽和に達し,温度増加に伴い薬剤導入量が増加することが明らかになった.またイブプロフェンと同様の難水溶性非ステロイド性抗炎症物質であるケトプロフェンについても検討を実施したところ,類似した薬剤導入量の温度依存性を確認した.この温度依存性は,超臨界二酸化炭素中における薬剤溶解度,及び薬剤と競争吸着する二酸化炭素の吸着平衡という2つの因子の影響によるものと考えられる.今後は他の操作条件における検討も含めて詳細に考察した上で,超臨界二酸化炭素中における薬剤の溶解度及び吸着特性をモデル化することにより,本プロセスの定量的な理解及び効率的な設計が可能になると予想される.
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