研究課題/領域番号 |
16K18276
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小松 博幸 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30738076)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | セミクラスレートハイドレート / ガス分離 / 流動性 / ガス吸収 / 固形分率 |
研究実績の概要 |
本研究は,高分子分散剤がセミクラスレートハイドレート(SCH)スラリーの性状(固形分率,粒度分布,凝集性)に与える影響のメカニズムを解明し,流動性を維持しつつ高速分離可能なスラリーの開発を目的とする。これを達成するため,CO2存在下におけるSCHの固形分率測定法の開発,高分子分散剤がSCHスラリーの流動性および粒子径に与える影響,SCHスラリーへのCO2吸収機構,CO2存在下におけるSCHスラリーの流動性評価およびガス分離機構について検討した。その際,SCHのゲスト分子としてtetra-n-butyl ammonium bromide (TBAB)を用いた。 平成28年度の検討では,まず電気伝導率を利用したSCHスラリーの固形分率測定法について検討した。スラリーの電気伝導率と固形分率の関係を明らかにし,その関係性を表現したモデルを構築することで大気圧下での固形分率測定を可能とした。 続いて,高分子分散剤としてpolyvinyl alcohol (PVA)がSCHスラリーの分散性と分散安定性に与える影響を検討した。低重合度(1000以下)ものが架橋凝集を引き起こしにくいが,分散安定性は高重合度(2000程度)のものが高い結果となった。これより最適な添加濃度にすることで,重合度2000のPVAが適していることを明らかにした。 SCHスラリーへのCO2吸収量に関しては,測定精度に問題があり,装置改良を行った。これにより測定の不確かさを半分程度まで低減させることに成功した。また,CO2吸収後のSCHスラリーを観測したところ,綿状固体の形成や壁面への付着が確認された。また,固形分率は増大した。これよりCO2吸収過程においてスラリーの性状が変化することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固形分率測定に関しては,CO2加圧下でのin-situ測定装置は開発できていないが,CO2加圧条件で作成したSCHスラリーを取り出し,電気伝導率利用の固形分率測定法を適用させることでCO2が固形分率に与える影響の定量化に成功している。また,ガス吸収量測定装置やガス分離装置,CO2加圧下でのSCHスラリー流通装置は5月に完成予定である。以上のことから概ね順調に進展していると判断した。 ただし,制作した装置の動作確認は実施しておらず,測定精度等を考慮した実験方法や条件は確立していないため,妥当な結果が得られていることに留意しながら,研究を進める必要がある。もし不具合が判明した際には,その対応が求められる。また.PVAがSCHスラリーの分散性や分散安定性を向上させたメカニズムが明確になっていないため,けん化度や官能基を変えた高分子分散剤を用いて明らかにする必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
固形分率測定に関しては,非平衡条件でもスラリーの固形分率測定が可能なことを確認した後,スラリーの形成機構や凝集機構解明に展開させる。また,CO2加圧下での固形分率in-situ測定可能な装置開発を行う。 SCHスラリー流通装置に関しては,TBAB水溶液やSCHスラリーを大気圧条件下で流動させ粘度測定を行う。回転式粘度計との測定結果と比較し,流通装置での測定結果の妥当性を確認した上で,CO2がSCHスラリーの流動性に与える影響を検討する。 SCHスラリーへのガス吸収量測定にて妥当な結果が得られることを確認した後,吸収速度の定量的な解析へと展開させる。これらの実験によりガス吸収機構の解明を試みる。また,ガス分離性能を実際に評価し,ガス吸収機構との関連性を調査する。これらの知見により,ガス分離手法の指針を構築し,ガス分離プロセスの設計を試みる。
|