地球温暖化対策としてCO2の削減が求められる中、CO2回収・貯留技術(CCS)が注目されている。CCSの技術は二酸化炭素分離・回収、圧縮、輸送、貯蔵の工程があるが、CCSコストの約6割は分離・回収と試算されており、そのコストの低減が求められている。CO2の分離・回収法には化学吸収法、物理吸収法、吸着法、膜分離法、等様々な方法がある。本研究室では、常圧で大規模に発生する排ガスを対象とした化学吸収法において、相分離型吸収剤という概念を導入することで省エネ化を検討している。相分離型吸収剤とはアミン系溶液に添加剤を加えることで、二酸化炭素を吸収後に2液相に分離する新規の化学吸収剤である。本研究では、研究室で開発した相分離型CO2吸収剤に関してラボ吸収塔を設置し、吸収速度の測定を行った。比較としてMEA(モノエタノールアミン)、また相分離しない吸収剤、最初から2液相に分離している吸収剤と比較した。相分離液は相分離前後の吸収速度に大きく変化があり、相分離後に吸収速度が大きくなることが分かった。上記結果に基づき、総括容量係数を2つ含む吸収モデルを開発し、実験結果を良好に表現できることが分かった。他の吸収剤と比較すると相分離しない吸収剤は吸収初期から後期まで遅く、MEAや最初から2液相に分離している吸収剤とは同等の吸収速度であった。再生塔における再生率を考慮して循環液量を推定すると、MEAと比較し26%程度削減できることが示された。
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