低温でも作動可能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)の電極膜の開発をめざし、多孔質微粒子から多孔質膜(ポーラス膜)への成形技術を確立する。申請者が開発した改良型噴霧熱分解法により合成したスポンジ状多孔質微粒子を、多孔質構造を維持したまま成膜する。膜の多孔質構造により燃料電池としての性能の向上をめざす。最終的には、セラミックポーラス膜を成形する汎用技術として確立する。 電極膜の原料として用いる多孔質微粒子を改良型噴霧熱分解法で合成した。燃料極の材料としてNiとGd-Ce酸化物の複合微粒子を合成するため、原料としてNi、GdおよびCeの硝酸塩を溶解した水溶液に、多孔質構造を形成する添加物としてクエン酸と界面活性剤CTABを添加した。これを超音波振動子で霧化し、管状電気炉で600~1200℃に加熱した反応管にキャリアガス(Air)で随伴導入し、生成粒子を静電捕集器により回収した。硝酸塩、クエン酸の濃度、合成温度、加熱部の滞留時間を変え、種々の多孔質粒子を合成した。粒子を基板上に製膜し燃料電池セルを作製し、燃料電池としての性能を評価したところ、粒子の多孔度や比表面積が高いほど電池性能も高いことがわかった。また、製膜条件により膜の多孔質構造を制御することができ、これによっても電池性能の向上に成功した。今後は、燃料電池だけでなく、触媒材料や分離膜などの多孔質構造が必要とされるセラミック膜の作製方法として、本研究の成果が活かされるかを検証する予定である。
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