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2016 年度 実施状況報告書

気相反応制御によるTiO2/Cナノ複合材料の効率的製造手法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 16K18283
研究機関北海道大学

研究代表者

岩村 振一郎  北海道大学, 工学研究院, 助教 (10706873)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード反応プロセス / ナノ材料 / エネルギーデバイス / 炭素材料 / 化学気相成長法
研究実績の概要

平成28年度は主にチタンイソプロポキシドを液体のまま反応管にパルス状で導入することで、熱分解による炭素とTiO2の同時析出による複合体の製造を行った。反応管の温度によらずTiO2は高い収率で得られたが、炭素析出量は反応温度に大きく影響を受け、600℃以下の反応温度ではほとんど炭素が析出しなかった。また、1000℃以上ではTiO2が電極材料として使いやすいアナターゼ型からルチル型に相転移してしまうため、800℃程度の製造温度が適していた。本手法で得られる複合体はTiO2ナノ粒子に炭素を被覆した構造をしており、この複合粒子のサイズはキャリアガス流量に影響され、最小で粒径約40 nm複合体が得られた。これらの試料のリチウムイオン電池負極特性の評価を行ったところ、1.7 V(vs. Li/Li+)で充電した。この電位はアナターゼ型のTiO2へのリチウムイオンの挿入反応が生じると報告されている電位と一致すため、複合体中のTiO2は電気化学的に反応していることが確認された。しかし、これらの複合体の放電容量は120 mAh/g程度であり、市販のTi系負極材料よりも低かった。
十分の容量が得られなかった原因として炭素によるTiO2への導電パスが十分形成できていなかった可能性が考えられるため、複合体中の炭素含有量を増加させる必要性が考えられた。そこで、原料溶液に炭素源として有機溶媒を添加することにより、複合体中の炭素含有率を増加させることに成功した。この炭素含有量の多い複合体は市販のTi系負極材料よりも高い180 mAh/g程度の放電容量が得られた。しかも、この複合体は100サイクル程度では容量の低下がほとんど見られず、高いサイクル特性を有していることも判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究において気相における反応制御が難しい原料であるチタンアルコキシドから目的としていた均一なナノ粒子を製造することに成功し、さらにTiO2析出と炭素析出の反応速度の差を利用してTiO2ナノ粒子の外表面に炭素層を積層させることに成功した。得られた複合体は当初予定した電気化学的な応用に必要な炭素の導電パスが十分導入されていたため、ほぼ目的の物質の製造に成功したと判断できる。このため、今年度の進捗状況として「おおむね順調に進行している」と判断した。

今後の研究の推進方策

H28年度得られた複合体よりもさらにTiO2へ効率的な導電パスを導入するためには、TiO2のさらなるナノ粒子化が必要である。しかし、本年度行った手法では反応効率を維持したまま現状よりも大きく粒径を小さくすることは困難である。そこで、H29年度は当初計画していた通り、炭素材料を設置した反応器にTiO2前駆体を導入して炭素材料上にTiO2を被覆する方法を進めていく予定である。この手法ではTiO2のみが析出する条件に設定することが可能であるため、H28年度に用いた手法と比べTiO2の構造制御範囲の拡大が期待できる。

次年度使用額が生じた理由

H28年度は主に材料開発へ注力したため、電気化学特性評価についてはリチウムイオン電池負極としての基本物性の評価にとどまった。このため、当初予定していた詳細な電気化学特性評価に必要な測定用物品の購入予定が後ろ倒しになった。

次年度使用額の使用計画

H29年度は新規材料開発と共にリチウムイオンキャパシタ評価など様々な電気化学特性評価を進めていく予定であるため、この測定用物品の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] 液パルスインジェクション法によるTiO2/Cナノ粒子の高効率製造と電極材料への応用2017

    • 著者名/発表者名
      藤田 和樹、岩村 振一郎、荻野 勲、向井 紳
    • 学会等名
      第 25 回化学工学・粉体研究発表会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌市)
    • 年月日
      2017-01-27 – 2017-01-28
  • [学会発表] 液パルスインジェクション法により製造したカーボンナノファイバーのリチウム空気電池空気極への利用2016

    • 著者名/発表者名
      住田 稜、坂井 一樹、岩村 振一郎、荻野 勲、向井 紳
    • 学会等名
      第43回炭素材料学会年会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉市)
    • 年月日
      2016-12-07 – 2016-12-09
  • [学会発表] 賦活カーボンゲルへのホウ素ドープとEDLCへの応用2016

    • 著者名/発表者名
      大西 健太、岩村 振一郎、荻野 勲、向井 紳
    • 学会等名
      第43回炭素材料学会年会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉市)
    • 年月日
      2016-12-07 – 2016-12-09
  • [学会発表] 細孔構造制御により作製したMnO2/Cナノ複合体のキャパシタ電極への応用2016

    • 著者名/発表者名
      岩村 振一郎、梅津 遼太郎、大西 健太、荻野 勲、向井 紳
    • 学会等名
      第43回炭素材料学会年会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉市)
    • 年月日
      2016-12-07 – 2016-12-09
  • [学会発表] Introduction of additional micropores and tunable macropores into carbon gels2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Sakai, Takeshi Mori, Takanori Tsuchiya, Shinichiro Iwamura, Isao Ogino, and Shin R. Mukai
    • 学会等名
      The 10th International Conference on Multi-functional Materials and Applications
    • 発表場所
      Khon Kaen, Thailand
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-03
    • 国際学会
  • [学会発表] 液パルスインジェクション法により製造したカーボンナノファイバーのリチウム空気電池空気極への利用2016

    • 著者名/発表者名
      岩村 振一郎、住田 稜、坂井 一樹、荻野 勲、向井 紳
    • 学会等名
      第57回電池討論会
    • 発表場所
      幕張メッセ 国際会議場(千葉市)
    • 年月日
      2016-11-29 – 2016-12-01
  • [学会発表] 液パルスインジェクション法による電極材料用TiO2/Cナノ複合体の高効率製造2016

    • 著者名/発表者名
      岩村 振一郎、藤田 和樹、岩城凌、荻野 勲、向井 紳
    • 学会等名
      化学工学会 第48回秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学常三島キャンパス(徳島市)
    • 年月日
      2016-09-06 – 2016-09-08
  • [学会発表] CVD法による炭素複合材料の製造2016

    • 著者名/発表者名
      岩村 振一郎
    • 学会等名
      第54回炭素材料夏季セミナー
    • 発表場所
      富士通労働組合総合センター(上水内郡飯綱町)
    • 年月日
      2016-08-29 – 2016-08-30
    • 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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