昨年度の成果からチタンイソプロポキシド(TTIP)を800℃程度の高温の反応管に液パルス状で導入することにより、TiO2/Cナノ複合体の効率的な製造、および製造条件の調節による構造制御に成功した。この複合体はTiO2担持量が大きく、TiO2負極材料として高い容量が得られたが、TiO2のサイズは40 nm程度までしか小さくできないため、高速充放電特性を向上させることは困難であった。そこで、平成29年度は高速充放電特性の高いTiO2負極材料を製造するために、予め用意した炭素担体に粒径の小さなTiO2ナノ粒子を担持するための化学気相成長(CVD)技術の開発に取り組んだ。 炭素担体は原料ガスが内部まで拡散可能であることに加えて、安価である市販の多孔質炭素を複数種類使用した。多孔質炭素の細孔内へTiO2を均一に担持するために、あらかじめ減圧状態にした反応管へTi源であるTTIPを液パルス状に導入した。このCVD条件にすることで多孔質炭素内への原料ガスの拡散を促進することに成功し、細孔径が約150 nmのマクロポーラスな多孔質炭素の内部に約4 nmの微小なTiO2ナノ粒子を均一に担持することに成功した。また、真空ポンプによる排気を常に継続したことで、余剰なガスは円滑に排出され、多孔質炭素外表面への担持は最小限に抑えることができた。担持されたTiO2は多孔質炭素担体による導電パスが十分行き届いており、効率的にTiO2のLi貯蔵容量を活用でき、非常に高い高速充放電特性が得られた。さらに、10000サイクルの充放電後にも80%の容量を保持しており、サイクル特性も優れているいことも確認された。このため、本材料はリチウムイオンキャパシタの負極材料などの用途への利用が期待できる。
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