研究課題/領域番号 |
16K18286
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研究機関 | 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
黒木 秀記 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー, 高効率次世代燃料電池プロジェクト, 研究員 (70716597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 燃料電池 / ナノファイバー / 触媒 / ネットワーク / プロトン伝導 / 白金合金 / 酸素還元反応 / 超臨界 |
研究実績の概要 |
本研究では、固体高分子形燃料電池(PEFC)における次世代触媒層材料として、PEFC触媒層に求められる全ての機能(触媒反応・プロトン伝導性・導電性)を単一の材料に集約化した触媒・電解質一体型ナノファイバーの開発とその有用性の実証を目的としている。本材料のシェル部分は白金合金金属ナノ粒子が融着したポーラスなネットワーク構造であるため触媒活性と導電性を有し、その内部(コア部分)はプロトン伝導ナノファイバーで構成される。 本年度は、まずコア部分の開発に着手し、エレクトスピニング法を用いて、Zirconium hydroxyl ethylidene diphosphonate (ZrHEDP) ナノファイバーを作製した。作製したZrHEDPの構造解析から、数百nmのファイバー形状が観察され、また、プロトン伝導に必要なリン酸基が十分導入されていることを確認した。耐熱性の評価から、400℃付近まで安定な材料であることが示された。得られたZrHEDPナノファイバーは、インピーダンス測定からプロトン伝導性を有することが分かり、本研究に必要な耐熱性のあるプロトン伝導性ナノファイバーの開発に成功した。続いてシェル部分の開発として、ポリオール法と超臨界処理を利用して、白金鉄(PtFe)ナノ粒子が連結したネットワーク構造の形成を行った。作製したサンプルの構造解析から、PtFe合金ナノ粒子同士が融着した多孔性ネットワーク構造を表面に持つナノファイバーが確認され、本研究が提案する触媒・電解質一体型ナノファイバーの作製に初めて成功した。本材料は、従来のPEFC材料とは大きく異なる構造と機能を有するため、PEFC触媒層への展開に向けて、より詳細な構造解析と電気化学評価に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的であった触媒・電解質一体型ナノファイバーの作製に成功し、それらの構造解析、電気化学評価を順調に進めている。コア部となるプロトン伝導性ZrHEDPナノファイバーは、耐熱性が高くプロトン伝導性を示すことから、燃料電池触媒層に必要な機能を有する。その一方で、耐熱性、プロトン伝導性の向上を目指し、異なるZr系プロトン伝導材料であるZirconium sulphophenyl phosphate (ZrSPP)、Sulfated zirconia (SZr) の開発にも着手している。シェル部分の触媒ネットワークについては、超臨界処理条件によって、ネットワーク構造(連結性、結晶子径、原子配列など)を制御できることを見出しており、その構造が触媒性能に与える影響を調査している。開発した一体型材料の改良を進めつつ、燃料電池触媒層材料としての有用性を実証することで、高耐久で高効率な燃料電池の実現が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した触媒・電解質一体型ナノファイバーの詳細な構造解析と酸電解液中での電気化学測定を引き続き進め、得られた結果を基に、材料の設計・改良へフィードバックさせる。プロトン伝導性ナノファイバーに関しては、ZrHEDPナノファイバーに加えて、ZrSPP、SZrのナノファイバー化を行い、耐熱性、プロトン伝導性の向上を検討する。ナノファイバー表面のPtFeナノ粒子連結ネットワークは、超臨界条件(処理温度など)を変更し、結晶構造、ネットワークの発達具合、触媒(酸素還元反応)活性を評価する。さらに、一体型ナノファイバーをPEFCカソード触媒層へ適用する。材料特性(触媒活性、プロトン伝導性、導電性)とその触媒層構造が発電特性や耐久性に与える影響を議論する。これらの実験結果から、PEFC触媒層に適した特性や構造へ最適化させ、新規触媒・電解質一体型ナノファイバーの有用性を実証する。
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