固体高分子形燃料電池(PEFC)を普及技術として確立するためには、触媒活性の向上による低白金化や耐久性の向上が必要不可欠である。本研究は次世代PEFC触媒層材料として、触媒層に求められる全ての機能を単一の材料に集約化したカーボンフリー触媒・電解質一体型ナノファイバーを開発した。本材料のシェル部は白金合金ナノ粒子が連結したネットワーク構造であるため触媒活性と導電性を有し、その内部(コア部)はプロトン伝導ナノファイバーで構成される。 前年度において、ZrHEDPナノファイバー表面にPt-Feナノ粒子連結ネットワークを形成することに成功した。構造解析の結果、ZrHEDPナノファイバーはリン酸基が導入された直径数百 nmのファイバーで、プロトン伝導性を有し、400℃付近まで安定な耐熱性の高い材料であることが確認された。 今年度は、異なるZr系材料のZrSPP、SZrナノファイバーの開発・評価を進め、触媒層に適したプロトン伝導体の探索を行った。その結果、ZrSPP、SZrはZrHEDPよりも耐熱性に優れるものの、プロトン伝導性はZrHEDPの1/5程度であることが確認された。このことから、最もプロトン伝導性の高いZrHEDPをコア部とした一体型材料に関して、シェル部のPt-Feナットワークの燃料電池触媒活性を評価した。一体型材料のPt-Feネットワークは、従来のカーボン担持白金ナノ粒子触媒に比べて、酸環境での酸素還元反応活性が大幅に向上することが示された。さらに、Pt-Feネットワークは導電性を有するカーボンフリー構造であり、従来の触媒で問題となるカーボン腐食による劣化を回避できるため、高耐久な材料である。 以上の成果から、本研究で初めて開発したカーボンフリー触媒・電解質一体型ナノファイバーは、PEFCの低白金化や耐久性向上を実現する上で非常に有望な材料であることが実証された。
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