平成30年度は、白金(Pt)-スズ(Sn)2元系ナノ粒子(PtSn NP)を担体上に担持する方法について検討した。ナノ粒子には本研究で明らかにした、カルボン酸の水素化反応に高活性を示すSn:Ptが1:3の原子比となる合金(Sn1Pt3合金)を有するPtSn NPを用いた。担体にはシリカ(SiO2)を用い、ナノ粒子の分散液をSiO2の細孔内に充填することでPtSn NP/SiO2触媒を調製した。 1. PtSn NPは、有機化合物からなるキャッピング剤によりナノ粒子同士の凝集を抑制されている。担体効果を明確にするためには、ナノ粒子と担体の接触にはキャッピング剤の除去が必要である。キャッピング剤は空気酸化により除去できるが、Sn1Pt3合金は酸化によりPtとSnO2に分離するため、水素雰囲気化でのキャッピング剤の除去を行った。熱重量示差熱分析装置を用いた水素化での昇温実験(室温~600 ℃)において、200 ℃付近から重量減少が起こり、600 ℃までで約10%の重量減少が見られた。これは、酸化による重量減少と同程度であったことから、水素雰囲気化でもキャッピング剤を除去できることがわかった。600 ℃までの水素処理後もSn1Pt3合金構造は維持された。 2. 調製したPtSn NP/SiO2を水素雰囲気化での熱処理温度が、Sn1Pt3合金の結晶子径に与える影響を検討した。PtSn NPの結晶子径が6 nmであったのに対し、PtSn NP/SiO2を100、 200、および400 ℃で熱処理すると結晶子径はそれぞれ7、8および26 nmとなった。還元温度の増加により、ナノ粒子の凝集が進行した。200 ℃未満ではキャッピング剤の燃焼が起こらないことから、200 ℃での熱処理が適している。以上のように、Sn1Pt3合金構造および結晶子径を維持したナノ粒子の担持方法を確立した。
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