研究課題/領域番号 |
16K18291
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
菅沼 学史 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90731753)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グリセロール / 脱水酸化反応 / アクリル酸 / アクロレイン / 二元機能触媒 |
研究実績の概要 |
循環型社会を実現するために石油化学資源から再生可能なバイオマス資源の利用へ転換することが求められている.グリセロールは脂肪酸や石鹸の製造過程で副生するが,近年ではさらに天然油脂を原料とするバイオディーゼル燃料の生産過程で大量に副生しているため,その新規用途開発が求められている.高吸水性樹脂,粘接着剤,各種エステル等の原料として使用されるアクリル酸は,主にプロピレンを直接酸化して製造されているが,グリセロールの脱水反応によって生成したアクロレインを酸化して合成する方法もある.この方法は通常2段階の反応で行われているが,グリセロールからワンパスでアクリル酸を合成することでプロセスを簡略化できればエネルギー低減が可能となる.特に,アクロレインは非常に反応性に富む物質で重合や爆発が起きるため,アクロレインから即座にアクリル酸に変換できれば安全性,生産性の向上が期待できる.本研究では脱水反応に活性があるZSM-5の粒子をアクロレインの部分酸化に適した酸化触媒で内包する二元機能触媒を調製できればグリセロ-ルからアクリル酸の生成を逐次的に進行させることが可能となることが期待される.平成28年度年初はアクロレイン酸化に適した触媒の探索を行った.高い触媒活性を示す触媒としてMo-Vの複合酸化物を想定していたが,ZSM-5の形成にはW-V複合酸化物が適していた.二元機能触媒の調製ではヘキサゴナルタングステンブロンズ構造の複合酸化物上にポリエチレンイミンを吸着させた後,ZSM-5の種結晶溶液と共に攪拌して酸化物外表面上に吸着させる.焼成後にイオン交換して最終的には外表面に酸点,内部に酸化活性点を有する二元機能触媒を得ることができた.この触媒を用いたグリセロール脱水酸化反応は比較実験で行った触媒層の前段にZSM-5, 後段にW-V複合酸化物をつめた反応に匹敵する触媒活性とアクリル酸選択率を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二元機能触媒の調製に成功しており,グリセロール脱水酸化反応におけるその触媒活性とアクリル酸選択率は比較実験である触媒層の前段にZSM-5, 後段にW-V複合酸化物をつめた反応に匹敵する結果を示した.しかし,アクリル酸選択率はまだ30 %程度であるので向上させなければならない.研究実施計画に示した項目1が終了し,現在項目2に取り組んでいるため研究計画に沿って順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
29年度は触媒構造の検討を行う.現在の課題はアクリル酸選択率を向上させることなので酸化触媒の検討を進める.W-V複合酸化物にNbなどの第3成分を添加させることでアクロレインの酸化活性,アクリル酸選択率が向上することが報告されているのでこれらの酸化触媒を用いた検討を行う.また,反応条件も検討することでより高い選択率を示すようにする.この検討と並行して,詳細な構造解析を進めて,本反応における触媒活性と構造との関係を明らかにする.ワンパスでのアクリル酸合成は複数の副反応が同時に進行する複雑な反応系である.目的反応や副反応が触媒上で起きているメカニズムを理解することで,さらに高効率にアクリル酸を得る触媒反応を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
端数金額を処理できなかったので次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
試薬の購入に利用する.
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