研究課題/領域番号 |
16K18292
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
今村 和也 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (30750624)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光触媒 / 化学選択的 / 水素化分解 |
研究実績の概要 |
C-O, C-N, C-Sなどの異種元素同士の結合の選択的な開裂は,有機合成化学において使用される技術の一つである.中でもC-O結合の選択的な開裂は,リグニンの分解におけるキーテクノロジーであり,近年注目されている.本研究は金属助触媒担持型酸化チタン(M-TiO2)を光触媒として利用しC-O,C-N,C-S結合の選択的な切断を目的とするものである.平成28年度はC-O結合の光触媒的開裂反応に対してPd-TiO2が高い活性を示すことを見出した.平成29年度は研究実施計画に従い,本反応系の反応条件の最適化と基質拡張を行なった.また平成28年度に予定していたが異動に伴って推進が遅れていた,助触媒の合金化を検討し,以下の結果が得られた. 1)Pd-TiO2に異種金属としてPtを様々な条件で添加したが,効果は得られなかった.2)C-O結合とシアノ基やカルボニル基のような水素化されやすい官能基を有する化合物を基質として,Pd-TiO2による開裂反応を2-PrOH中で行なった場合,シアノ基が水素化されることなくC-O結合の開裂のみが化学選択的に進行することを見出した.3)基質の拡張性を検討し,脂肪族と芳香族がC-O結合で繋がっている化合物にも有効であることを見出した.4)以上の結果を第120回触媒討論会,2017年日本化学会中四国支部大会・鳥取大会で発表し,論文としてまとめてChemical Communications に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載していた検討すべき項目である「金属ナノ粒子の合金化」や「反応条件の最適化」を行うことができた.反応メカニズムの解明が遅れているものの,反応条件を検討する中で,シアノ基やカルボニル基を有する化合物のC-O結合だけを化学選択的に開裂反応が可能であることを見出した.特にシアノ基とC-O結合を有する化合物に対する化学選択性は,転化率が100%になった後さらに反応時間を延長してもほぼ100%のままであった.これらの結果を第120回触媒討論会,および日本化学会中四国支部大会にて発表することができた.さらに論文としてまとめ,Chemical Communications に投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
C-Oの化学選択的な開裂反応を発表したところ有機化学を専門とする研究者から好評であった.これを受けて本年度は化学選択性を意識した反応系の開拓も行う予定である.高知大学で原子吸光分析器を使用できる状態にできたので,様々な金属の正確な担持量を検討することができるようになった.昨年度行なった合金の検討における金属の種類の見当が不十分であったので平成30年度はこれを積極的に進める.さらに研究計画に従って,理想的には空気雰囲気で進行するような反応系の構築を目指し,触媒と溶媒を行う.また,反応メカニズムの解明を目指し,速度解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本学の恩田講師,柳澤教授とガラス器具,リアクターを組むための配管,ガスボンベなどをシェアさせていただくことによって,これらの負担が減ったためである.次年度使用額を利用して,原子吸光のカソードランプを揃えることで本研究の中でやや遅れている見当項目である,金属助触媒の合金の種類の検討を進める予定である.
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