本研究では、「金属前駆体」と「触媒表面に存在する官能基」の反応を利用し、ある活性金属を担持金属ナノ粒子上に選択的に析出させることを試みた(表面化学的アプローチ)。残念ながら、担持二元金属ナノ粒子のみを担持させるという当初の予定は達成できなかった。本年度の検討を通して、「硝酸銅」を「メソポーラスシリカ担持ジルコニアのジルコニア上」に選択的に析出させることに成功した。 メソポーラスシリカに硝酸ジルコニル水溶液を含浸し、400度で焼成することで、メソポーラスシリカ担持非晶質ジルコニアの粉末を得た。この粉末に硝酸銅水溶液を含浸させ、350度で焼成することで、緑色の粉末を得た。触媒粉末の色が緑色だったため、メソポーラスシリカ上には酸化銅(黒色または赤色)が存在していないことが示唆される。XAFSによると、この銅種は酸化銅に似ているものの、歪んだ構造を有していた。この緑色の発色は、銅―ジルコニウム混合酸化物の色に由来すると考えられる。以上より、「硝酸銅」が「非晶質ジルコニア表面上の水酸基」と反応し、銅種がジルコニア表面に選択的に析出することで、メソポーラスシリカ担持銅―ジルコニウム混合酸化物の形成につながったと結論付けた。 また、メソポーラスシリカに硝酸ジルコニル水溶液を含浸し、600度以上で焼成することで、メソポーラスシリカ担持正方晶ジルコニアの粉末を得た。この粉末に硝酸銅水溶液を含浸させ、350度で焼成することで、灰色の粉末を得た。これらの触媒は、メソポーラスシリカに酸化銅と正方晶ジルコニアが担持された構造を有している。 銅―ジルコニウム混合酸化物を有する触媒は、二酸化炭素からのメタノール合成反応に特異な活性を示した。この触媒を水素還元することで、金属銅の微粒子が形成されたのではないかと考えている。上述の金属銅の微粒化が、銅―ジルコニア界面(主な活性点)の増大につながるためである。
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