研究課題/領域番号 |
16K18298
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸谷 吉博 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (70582162)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フラックスセンサー / 代謝フラックス制御 / 物質生産 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、蛍光タンパク質を利用して大腸菌細胞内の代謝状態を可視化する技術を応用して、培養プロセスの新規制御方法を開発する。微生物を利用した有用物質生産において、目的物質を安定に高生産するには、代謝フラックスの適切な制御が重要である。大腸菌によるメバロン酸の生産では、メバロン酸の生合成に還元力NADPHが必要であるため、解糖系とペントースリン酸経路のフラックス比を適切に維持する必要がある。近年、大腸菌の解糖系フラックスの蛍光タンパク質を利用して可視化する技術が開発された。この技術を培養プロセスの制御に利用する。すなわち、培養槽から即時に代謝フラックスの情報を取得し、実際の代謝を理想状態に近づけるように遺伝子発現量を制御し、代謝フラックスを目標の値に制御する。 本年度は、解糖系上流の酵素であるホスホグルコースイソメラーゼの発現量をイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)で制御可能な株に、フラックスセンサーを導入した。IPTGの添加量よって解糖系とペントースリン酸経路のフラックス比を制御し、その変化を蛍光強度として検出できることを確認した。メバロン酸生産株の制御に必要な範囲でセンサーが機能することを確認した。次に、解糖系フラックス制御システムを導入したメバロン酸生産株を構築した。Enterococcus faecalis由来のメバロン酸合成経路遺伝子を恒常発現プロモーター下で発現させ、解糖系とペントースリン酸経路のフラックス比の変化が、メバロン酸の生産性に及ぼす影響を評価した。また、IPTGによる遺伝子発現の誘導は、一度添加した薬剤を除くことが難しいという欠点がある。そこで、薬剤添加以外の物理的な刺激による遺伝子発現の誘導システムを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、申請書の計画通り、解糖系とペントースリン酸経路のフラックス比の制御株にフラックスセンサーを導入し、メバロン酸生産株の制御に必要な範囲でセンサーが機能することを確認した。また、解糖系とペントースリン酸経路のフラックス比の制御株にメバロン酸合成経路遺伝子を導入した株を構築し、フラックス比の変化がメバロン酸の生産性に及ぼす影響を評価した。さらに、予定を前倒し、薬剤添加以外の物理的な刺激による遺伝子発現の誘導システムの導入に着手した。 以上の進捗状況により、順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
グルコースを制限した連続培養条件において、蛍光強度として検出した解糖系フラックスを指標に、解糖系フラックスを理想値にフィードバック制御するシステムの開発を進める。また、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシドによる遺伝子発現の制御は、一度添加した薬剤を除くことが難しいという欠点があるため、光刺激による遺伝子発現の誘導システムを実装し、フラックスの比例制御を可能にする。最後に、開発したプロセスをメバロン酸生産について評価するため、フラックスセンサー、解糖系フラックス制御システム、メバロン酸生合成経路の遺伝子発現の機能を1つの細胞に全て導入した大腸菌変異株を構築し、解糖系フラックスを制御した場合と制御しなかった場合のメバロン酸の生産性の違いを比較し、本培養プロセス制御の有用性を定量的に実証する。
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