本年度もPIMによるMIPの機能化に関する検討を行った。モデル化合物として前立腺特異抗原(PSA)を用い、PIM用の機能性モノマーとして4-[2-(N-methacrylamido)ethylaminomethyl]benzoic acid (MABA)を合成した。このモノマーは相互作用部位として安息香酸部位、これと重合官能基の間にPIM部位として2級アミンを有する構造となっている。重合開始基としてbromo基、PSA固定化部位としてphenylboronic acid部位を有する混合自己組織化膜を作製し、これにPSAを固定化した。MABA、MPC(コモノマー)、MBAA(架橋剤)を10 mMリン酸緩衝液(pH 7.4)中、40℃で1時間反応させることで表面開始原子移動ラジカル重合にてポリマー薄膜を作製した。このポリマー薄膜の分子認識特性を表面プラズモン共鳴(SPR)測定装置にて検討を行ったところ、濃度依存的なSPRシグナルの増加が観察されたことからPSA結合空間が形成されていることが示唆された。また、選択性について検討を行ったところ、非標的分子の結合が多くみられた。このことからPIMとして低濃度のPSAを添加することで高親和性の結合空間を保護し、低親和性の結合空間にカルボン酸活性エステルを有するoligoethylene glycol鎖を導入するキャッピング処理を行ったところ、優選択性の大きな改善が確認された。また、アミノ基に反応活性のある蛍光分子を導入したところ蛍光分子に由来する蛍光シグナルが確認され、これにPSAを添加すると濃度依存的な蛍光強度の変化が観察された。 これらのことからPIMにより結合空間を選択的に修飾しMIPの機能を制御することにより情報発信型の高機能性材料を実現できることから、本研究における要素技術が実現可能であることが示された。
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