本研究はデジタルカメラの映像解析技術High dynamic range imaging (HDR)の概念を質量分析(MS)に応用することで、解析方法の検討(標準試料を用いたHDR-MSの解析方法の検討、性能の確認)、実サンプル分析での性能確認(実サンプルにおけるHDR-MSの性能の確認)を実施する計画であった。 昨年度までに解析方法の検討、実サンプルでの性能確認、および酵母代謝解析への応用を行っている。結果としてダイナミックレンジは最大2桁程度の向上が見られた。また酵母のフットプリントへ応用することで幅広いダイナミックレンジでの成分分析を行うことができた。 本年度は同位体希釈法とHDR-MSを組み合わせた分析法のためのサンプル調整を行った。アルカン資化性酵母であり、物質生産において注目されているYarrowia lipolytica培養時の培地成分の変化を絶対定量するために、培地成分を定期的にサンプリングした。 またスキャン分析とHDR-MSを組み合わせたダイナミックレンジ向上技術の検討も行った。得られたデータの解析ワークフローの構築を行った。これまでの解析方ではmultiple reaction monitoringのデータしか解析できなかったが、スキャン分析のデータも新たに解析できるようになった。 また研究に用いる、プログラム(R programming)のコード改良および使用するソフトウェアの再検討も行った。これによりベンダーに依存しない、解析ワークフローの構築を行った。
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