研究課題
安全な再生医療のためには幹細胞の培養過程で生じる腫瘍原性細胞を排除する必要がある。これまで我々は、正常ヒト胎児肝細胞を酪酸ナトリウム(SB)処理することで幹細胞の一種である肝芽細胞が誘導され、その過程で腫瘍原性肝幹細胞(悪性形質転換細胞)の出現することを確認している。そこで、本研究では正常細胞に作用せずがん細胞のみに細胞死(アポトーシス)を誘導するハイブリッドリポソーム(HL)を利用して、腫瘍原性肝幹細胞の排除を試みた。下記の成果を得ることが可能となった。(1)ヒト胎児肝臓細胞に対して、SB処理することで肝芽マーカー(EpCAM, ICAM)の発現が顕著に増大し、肝芽細胞へ誘導されることが示された。(2)SB単独処理では腫瘍原性細胞の出現が確認されたが、HL処理することで腫瘍原性細胞は有意に減少した。(3)HL処理後に肝臓細胞を継代培養しても腫瘍原性細胞の再出現を抑制していた。(4)SB処理により誘導された腫瘍原性細胞の細胞は、がん細胞と同様に細胞膜の流動性が増大している可能性が示された。(5)腫瘍原性細胞へのHLの融合・蓄積に関し、蛍光リン脂質を含有したHLは、SB処理した肝臓細胞に対して、蛍光蓄積率が顕著に増大した。(6)肝機能(CYP3A4活性)測定では、HL処理した細胞は、SB単独と比べ、高いCYP3A4活性を維持していた。以上のことより、HLは腫瘍原性幹細胞を選択的に排除し、その後の培養でも腫瘍原性細胞の再出現を抑制しつつ、正常な幹細胞が残存している可能性が示された。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
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http://rsrch.ofc.sojo-u.ac.jp/sjuhp/KgApp?kyoinId=ymdbyyosgys