研究課題/領域番号 |
16K18309
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
浅田 健吾 東京理科大学, 工学部情報工学科, 研究員 (00773318)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DBDプラズマアクチュエータ / 数値流体力学 / 乱流 / 流体制御 |
研究実績の概要 |
本課題ではDBDプラズマアクチュエータを用いた流れ制御を実流れに適用する事を目的として,乱れた流れ(乱流)を含む小さなスケール流れ(低レイノルズ数流れ)及び乱流へと容易に遷移する大きなスケール流れ(高レイノルズ数流れ)において,効果的である剥離制御手法を非定常解析が可能なラージエディシミュレーション(LES)を用いて明らかにする. 現状DBDプラズマアクチュエータの有用性が示されているのは乱れを含まない低レイノルズ数環境下に限られており,実際の航空機が飛行する高レイノルズ数環境下での性能実証が不可欠である.しかしながら高レイノルズ数条件下でのLESは莫大な計算資源が必要となるために最も計算コストの集中する物体壁面乱流のモデル化が必要となる.そこで本年度は乱流の壁面モデル構築のためにコード長と一様流基準のレイノルズ数で2.1×10^6 の翼流れ解析を行い,モデル構築に必要な高レイノルズ数流れの物理を明らかにした.対象とした流れは翼前縁近傍で層流剥離・乱流遷移・乱流再付着し,翼後縁で再度剥離する.流れ場の可視化及び周波数解析により,翼前縁付近の層流剥離剪断層からスパン方向に軸を持つ渦がコード長に基づく無次元周波数でSt~130の周期で放出された後に乱流へと遷移する過程を明らかにした. 更に,運動量方程式の応力バランスの解析によって剥離を生ずる前後では圧力勾配項が支配的になり,従来多くの壁面モデルでは省略されていた同項が剥離を生じる翼流れにおいて重要である事を示した.また, 計算格子解像度とスパン長を変化させた流れの比較により,層流剥離剪断層から放出される渦及び乱流境界層を解像する解像度,後縁剥離領域と同程度のスパン長が必要であることを明らかにした.これらの結果は高レイノルズ数流れのLESを行う上で重要な知見であり,得られた成果は国内外の学会で発表済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では一様流に乱流を含む低レイノルズ数流れの剥離制御を本年度は主に行う予定であったが,高レイノルズ数乱流の大規模データベースが利用可能であり,高レイノルズ数流れのシミュレーションの方が多くの時間を要するためにそちらを優先した.本年度は低レイノルズ数流れのシミュレーションに関しての進捗は少ないものの,代わりに高レイノルズ数流れのシミュレーションを推進した形となる.現在,低高レイノルズ数両者にDBDプラズマアクチュエータを加えたシミュレーションの準備を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は一様流に乱流を含む低レイノルズ数流れ及び,壁面モデルを用いた高レイノルズ数流れの剥離制御流れのシミュレーションを行う. 高レイノルズ数流れのシミュレーションは本年度得た知見を基に壁面モデルを用いたLESを行う.現在,本年度見送った低レイノルズ数流れのシミュレーションを行うために一様流乱流を導入するプログラムを流体解析プログラムに組み込み中である. 準備ができ次第,前期中に低レイノルズ数のシミュレーションを実施し,計算の待ち時間を利用しながら壁面乱流モデルを用いた高レイノルズ数流れシミュレーションの準備を進める. 後期に高レイノルズ数のシミュレーションを実施し,本課題の目的を達成する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は所属研究室の研究資源を使用可能であったために当初予定していたワークステーション,ストレージの購入は見送り,主に進捗のあった成果を発表するための旅費として予算を使用した.それらの差額を次年度に繰り越す.
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表を行うための学会渡航費として主に予算を使用する予定である.また,シミュレーション結果保存のためのストレージや結果の解析に用いるワークステーションの購入も行う予定である.
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