本課題ではDBDプラズマアクチュエータを用いた流れ制御を実流れに適用する事を目的として,乱れた流れ(乱流)を含む小さなスケール流れ(低レイノルズ数流れ)及び乱流へと容易に遷移する大きなスケール流れ(高レイノルズ数流れ)において,効果的である剥離制御手法を非定常解析が可能なラージエディシミュレーション(LES)を用いて明らかにする.現状DBDプラズマアクチュエータの有用性が示されているのは乱れを含まない理想的な低レイノルズ数流れに限られており,本デバイスの実用化には実際の航空機が飛行する乱れを含むような流れ環境下での性能実証が不可欠である. H30年度は当課題の最終年度であるために成果発表に注力し,共著を含めて国際ジャーナル1本,国際学会1件の発表を行った.国際ジャーナルでは乱流の壁面モデル構築のためにコード長と一様流基準のレイノルズ数で2.1×10^6 の翼流れ解析を行い,モデル構築に必要な高レイノルズ数流れの物理現象を明らかにした.特に,剥離を生ずる前後では圧力勾配項が支配的であり,従来多くの壁面モデルでは省略されていた同項が剥離を生じる翼流れにおいて重要である事を示した.また,国際学会においては,平板流れに対して人工乱流を付加したシミュレーションを行い,平板上に形成される剥離泡への影響を検証した.乱れのない理想的なシミュレーションでは遷移・再付着が実験に比べて下流で発生するのに対して,人工乱流を伴うケースでは流れの再付着が実験とほぼ同等の位置で生じること示すとともに,乱流遷移を促進する乱流スケールを明らかにした. 当課題の最終目的である実流れに効果的な流体制御手法を提案するまでは至らなかったが,得られた知見や開発したシミュレーション技術はDBDプラズマアクチュエータの実用化に役立つものである.
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