研究課題/領域番号 |
16K18318
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
小池 雅和 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (70756337)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水面搬送 / 水中搬送 |
研究実績の概要 |
平成28年度は基礎的な水面搬送研究と局所的な振動発生方法を研究した.小型水槽全体を振動させ,内部や水面の粒子移動現象のメカニズムを解析した.その結果,水面よりも水中の物体の方が搬送現象に適していることが確認できた.また,局所的な振動発生方法を提案し,学会にて発表した.以下詳しく報告する. 【振動発生装置の製作と基礎研究・水槽実験】局所的な振動発生では搬送現象をとらえづらいので,小型水槽を用いて水槽全体を加振することで,搬送現象を解析した.加振装置としてはXYステージを用い,数10Hz程度で加振実験を行った.荷物船の変わりに,比重の異なる二つの粒子を用いた.一つは水面に浮く粒子,一つは水中に沈む粒子である.実験の結果,水面に浮く粒子においては,多くの未知の要因が複雑にからんで搬送現象を起こしており,任意の位置への搬送が困難であった.一方,水中内の粒子においては,特定の周波数・振幅・容器の水面までの高さ,容器の振動方向の長さに依存して,特定の位置への搬送現象がみられた.従来文献でも水中内での粒子の搬送現象は解析されているが,水面の高さ方向の振幅が限りなく小さい等の非常に理想的な仮定の上で成り立っており,適用の幅が狭かった.一方,本年度の研究によって,水面までの高さまで考慮にいれて,周波数と特定位置との関係を明らかにした.従来文献の適用範囲を広げたという点で意義がある. 【数値モデルの構築】ポテンシャル流モデルをベースとして水面の高さ方向の振幅が限りなく小さいという仮定を除いた数値モデルの構築に取り組んだが,妥当な数値モデルは構築できていない. 【その他】局所的な振動源を用いて搬送現象を確認する予定であり,振動発生方法として,on-off駆動・空圧シリンダ型加振器を対象とした振動発生方法を提案した.この内容は第59回自動制御連合講演会,および,IASTED2017にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は当初予定の研究よりも基礎的な研究にとどまった.当初は局所的な一つの振動発生装置により搬送実験を想定していたが,水槽全体を加振するより基礎的な実験までしか行えなかった.その原因の一つは水面搬送と水中搬送で予想以上に大きく現象が異なっていたためである.基礎研究により,そのメカニズムをある程度解析した上でなければ,次の段階である局所的な振動による搬送実験に進むのは妥当でない.現状では,水槽全体加振を前提とし,水中搬送に主眼をおき,そのメカニズムを従来文献に照らし合わせて解析しているところである.加振周波数をシーケンシャルに組み合わせることで,特定の位置ではなく任意の位置に水中粒子を移動させる手法を検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は当初予定の研究よりも基礎的な研究にとどまった.そこで,本年度は平成28年度当初予定の研究を荷物船ではなく水中内の荷物船に代えて遂行する.そのため,研究計画を以下のように変更する.
【水槽全体加振を前提とし,水中搬送での基礎研究】(平成29年4月~12月)加振周波数をシーケンシャルに組み合わせることで,特定の位置ではなく任意の位置に水中粒子を移動させる手法を提案する.数値モデルをこの期間に構築し,数値シミュレーションと実機実験によりその有用性を検証する.
【局所振動を前提とし,水中搬送での基礎研究】(平成30年1月~)この期間はブイ型振動発生装置による粒子の移動現象を確認する予定である.具体的には,水槽全体加振と同様の現象を引き起こす振動パターンを探る.曳航水槽を用いた大規模な実験は今年度は実施しない.
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次年度使用額が生じた理由 |
局所振動発生器の設計が遅れ,当該部材を購入していないため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成30年1月に局所振動を前提とした水中搬送での基礎研究を実施する予定であり,その際,局所振動発生器の材料費として使用する予定です.
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