研究実績の概要 |
平成28年度の研究では、8,000TEUクラスのコンテナ船に対し、局部荷重が作用する状態での縦曲げ崩壊挙動を非線形有限要素法により解析し、その崩壊挙動を明らかにした。また、局部荷重の影響を考慮できる縦曲げ逐次崩壊解析手法(拡張Smith法)を開発した。 平成29年度はより大型の14,000TEUクラスのコンテナ船に対し、局部荷重作用下における縦曲げ崩壊解析を行った。非線形有限要素法による解析を行ったところ、純ホギング状態では船底外板での座屈崩壊とデッキ側部材の降伏により縦曲げ最終強度に達した。一方、8,000TEUのコンテナ船は船底外板と内底板の座屈崩壊により縦曲げ最終強度に達しており、14,000TEUコンテナ船の崩壊挙動と異なる。局部荷重として水圧のみが作用する状態(空艙状態)では、船底外板が圧壊した時点で縦曲げ最終強度に達した。これは8,000TEUコンテナ船で見られた崩壊挙動と同じである。 加えて、14,000TEUコンテナ船に対し拡張Smith法による縦曲げ崩壊解析を行った。非線形有限要素法の解析結果と比較し、拡張Smith法が縦曲げ崩壊挙動および最終強度を良い精度で推定することを示した。荷重状態によっては崩壊挙動の異なる8,000TEUおよび14,000TEUのコンテナ船の両方に対して拡張Smith法の適用性が確認され、拡張Smith法の妥当性を検証することができた。 非線形有限要素法ならびに拡張Smith法による解析から得られた知見に基づき、局部荷重の影響を考慮してホギング最終強度を簡易的に推定する手法(以下、簡易推定法)を開発した。簡易推定法では、船体の全体曲げと二重底の局部曲げを考慮した最終強度相関関係式を用いる。8,000TEUコンテナ船の最終強度を簡易推定法により推定し、非線形有限要素法による解析結果と比較することで、提案法の基本的な適用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
船体が局部荷重とホギング曲げを受ける場合の船底外板の防撓パネルの崩壊挙動を詳細に調べた。このとき船底外板は二重底の局部曲げ変形により二軸方向に圧縮される。まさに崩壊が進んでいる防撓パネルに着目すると、隣接する防撓パネルやフロア材など周辺の健全な構造から拘束を受けるため、船幅方向の最終強度に達しても船長方向にはさらに圧縮荷重を受け持つことが明らかとなった。これは、本研究課題の平成29年度の研究実施計画である「周期境界FEモデルによる防撓パネルの崩壊挙動の調査」と「全体構造中における局部構造の崩壊挙動の調査」を実施したことに相当する。 また、研究実績の概要で述べたように、14,000TEUのコンテナ船に対して非線形有限要素法および拡張Smith法により局部荷重を受ける船体の縦曲げ崩壊解析を実施し、拡張Smith法の妥当性の検証を行った。これは、平成28年度の今後の研究の推進方策において計画した内容である。加えて、平成30年度に実施を計画していた縦曲げ最終強度の簡易推定法の開発を行った。8,000TEUコンテナ船を対象に、簡易推定法および非線形有限要素法により推定した縦曲げ最終強度を比較し、簡易推定法の基本的な適用性を確認した。 以上より、平成29年度末の時点では当初の計画以上に研究が進展していると言える。
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