研究課題/領域番号 |
16K18322
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
柴原 誠 神戸大学, 海事科学研究科, 特命助教 (70628859)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 相変化蓄熱材 / 比熱 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、蓄熱材の潜熱量評価を念頭に、種々の蓄熱材を用いた断熱比熱測定を実施した。相変化蓄熱材は、物質の状態変化中に発生する潜熱を利用した有機及び無機材料であるが、その潜熱量及び利用できる温度範囲は材料に依存し、温度応答性も蓄熱材により異なる。そのため、蓄熱材の潜熱量及び温度応答性が重要となる。実験では、種々の熱入力を蓄熱材に与えることで、入熱が温度履歴に及ぼす影響について調べ、蓄熱材の比熱に関する温度依存性を明らかにした。蓄熱材の比熱測定では、断熱比熱測定装置を使用し、白金―ロジウム細線の電位をデータロガーで高速サンプリングすることで、相変化時における温度履歴を計測した。また、得られた温度履歴から相変化時の比熱及びエンタルピーを算出する計算コードの開発を行った。今年度は、計算コードの妥当性を検討するため、ニッケルにおける比熱の温度依存性を計測し、ベンチマークデータとして比較及び本計算コードの検証を行った。さらに、本計算コードを用いて実験で得られた蓄熱材の比熱及びエンタルピーを算出した。蓄熱材には、糖アルコール類のD-マンニトール、ソルビトール、エリスリトールとし、水和塩では酢酸ナトリウム三水和物を対象に相変化時の比熱及びエンタルピー計測を実施した。また、白金線を用いた非定常細線計測を行うための実験装置を製作した。実験装置は、直流安定化電源、オイルバス、ホットプレート、白金線、標準抵抗および蓄熱材で構成され、白金線及び標準抵抗の電位を計測する。白金線の温度は、予め純水において校正曲線を求めておき、実験ではダブルブリッジ回路にて白金線の抵抗を計測した。自然対流熱伝達実験では、蓄熱材の種々の液温において白金線表面温度を熱伝導方程式より求め、種々の熱流束における白金線表面温度と液温の温度差を計測した。また、熱流束及び表面温度差を用いて自然対流熱伝達を求め、実験相関式を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蓄熱材の断熱比熱測定を予定どおり実施し、相変化時の比熱及びエンタルピーを算出する計算コードの開発も計画どおりに実施することができた。ベンチマークデータとしたニッケルの高温における比熱の変化も概ね計測でき、相変化蓄熱材の比熱変化にも適用できることを確認した。また、相変化時の蓄熱材の比熱及びエンタルピー変化を捉えることができた。さらに、非定常細線法による熱伝導計測を行うための実験装置を制作した。また、蓄熱材の自然対流熱伝達の計測が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
蓄熱材の熱伝導計測を行うため、平成28年度に制作した実験装置を用いて、蓄熱材の非定常熱伝達率から熱伝導率を求める方法を検討する。また、蓄熱材の限界を示す沸騰開始点についても検討行う予定である。さらに、水ループ強制対流試験により、蓄熱材から得られる入熱と等価な熱流束をジュール加熱として伝熱管に与え、伝熱管内の熱伝達率を計測する。実験では、非沸騰領域から核沸騰領域までの広範囲の実験データを取得し、実験相関式を求める。さらに、伝熱流動解析ソフトを用いて、定常及び過渡状態における熱伝達及び管内温度分布を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
断熱比熱測定装置において、当初は蓄熱材の容器を白金製として検討していたが、ガラスに変更しても比熱計測に影響が及ばないことが確認された。そのため実験では、ガラス容器を用いて比熱計測を行ったため、消耗品の費用が一部縮小された。
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次年度使用額の使用計画 |
物性値の分析に必要な計測関連機器及びソフトウェアを物品費として計上する。
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