研究実績の概要 |
本研究では, 航行中の排熱を蓄熱材により蓄熱する環境調和型排熱回収システムの検討を目的に, 蓄熱材の潜熱量, 蓄熱時の温度履歴などの蓄熱過程及び熱交換器用伝熱管の熱伝達率を明らかにした. 実験では潜熱量を評価するために,断熱比熱測定装置を用いて蓄熱材の固相から液相までの比熱を実測した. 本測定では種々の熱入力を与えることで入熱が温度履歴に及ぼす影響を明らかにし, 比熱に関する温度依存性を明らかにした. また,温度履歴から比熱を求める計算コードを独自に開発し,種々の物性を伴った蓄熱材の評価が可能となった.さらに,排熱回収に必要な蓄熱側と水側の熱伝達率について,実験および数値解析により明らかにした. 平成28年度から平成30年度までに得られた研究成果のまとめとして,蓄熱材の比熱,エンタルピー及び潜熱量を比較することで高性能蓄熱材の創成した.また,水ループ試験から加熱における沸騰熱伝達率及び限界熱流束を求め, 本蓄熱方式の適用要件について検討した. さらに物性実験では,蓄熱材に封入する炭素複合材料の添加量について検討した.さらに,封入量が蓄熱過程に及ぼす影響について調べた. 停泊時における内航船からの排ガスは, 港湾周辺の大気を汚染するため環境改善が課題である. 停泊時における排ガスは主に発電機からであり, 消費電力は燃料油加熱用の電気ヒーターが大半を占める.一方,大型船では燃料油の保温には蒸気が不十分となるため, 停泊時の蒸気は補助ボイラーにより補う状況である.本研究成果は,航行時だけでなく停泊時も含めた船舶の省エネルギー化を促進し,停泊時における燃料油加熱を念頭にした蓄熱型排熱回収システムの構築に寄与できる.蓄熱材における自然対流熱伝達や熱交換器用伝熱管の熱伝達率は本システムの設計データに必須であるが、実測でしか得られないため,実験的研究が学術的にも評価された.
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