研究課題/領域番号 |
16K18323
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 智行 広島大学, 工学研究院, 助教 (20452609)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 破壊力学 / 有限要素法 / 材料力学 |
研究実績の概要 |
実構造中に存在する三次元き裂の応力拡大係数と全く等しく変化する他の系におけるき裂は,弾性力学的にほぼ同じ力学的環境下になると考えられる.すなわち,三次元表面き裂最深部のき裂長さ-応力拡大係数の関係を無限板中の直線き裂上に再現する仮想応力である等価分布応力を求めることができれば,三次元の破壊現象をそれと等価な二次元破壊問題へと置き換えることができる.さらに等価分布応力上でのき裂結合力モデルを構築することで,当初Wellsが定義したき裂先端開口変位値と同じ物理量(き裂先端位置での活固有変位)が計算でき,大規模降伏条件下での脆性破壊解析や,無き裂からの高精度な疲労き裂進展解析が期待できる.
一方,これまでの脆性破壊基準ではき裂底での R 止まりの開口変位を CTOD と定義したり,実き裂先端から ±45 度の線を引き,それと き裂面との2か所の交点間の距離を CTOD とするなど,実測できる量に着目した種々のCTODが定義されてきた.これらは,Dugdale モデルで定義したもともとの CTOD とは異なり,破壊力学理論での物理的意味が明確ではない量である.これまでに,さまざまな CTOD が提案されてきた理由として,Dugdale モデルは一様応力分布下のみでしか定式化されておらず,任意応力分布下におけるき裂結合力モデルの CTOD を得る手法が確立されてこなかったためである.
本研究では,任意応力分布下でも き裂結合力モデルを取り扱えるように定式化を行う.無き裂からのき裂生成をモデル化するために極小き裂生成時の特異性を考慮したEDSについて検討した.また,活固有変位が脆性破壊基準の一つになり得るかについて検討を行うため,脆性破壊試験モデルや溶接継手モデルに対して三次元有限要素法解析を用いて開口変位および活固有変位を求め詳細な検討を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したプログラム開発を行なっており順調に進展していると思われる.今後,試験を行なう予定であるが,限られた予算での試験になるため,データが思わしくない場合,過去の試験データを活用させていただく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
無き裂からのき裂生成をモデル化するために極小き裂生成時の特異性を考慮したEDSについて継続して検討を行なってゆく.さらに脆性破壊試験を行なう予定である.試験機の都合により小型の試験片での試験になると思われるが,試験結果と FEM および開発したプログラムとの比較を行い本研究の成果をまとめる.
|