研究課題/領域番号 |
16K18327
|
研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
岡本 章裕 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (40734215)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | AIS / ASM / AUV |
研究実績の概要 |
本研究は、AUV(自律型無人探査機)が海面に浮上する際、周辺他船と衝突する危険を回避するためのシステム構築を目的としている。船位等の動的情報を他船と共有するために用いられているAIS(船舶自動識別装置)の機能を活用することでその実現可能性を検証する。 AISにはASM(Application Specific Message)による任意形式のデータ送出方法があり、これを用いて調査母船が把握している無人探査機の位置や観測予定海域などの動的情報を予め配信することで従来の旗旒信号や黒球形象物を用いた他船警戒方法を強化する手法を提案する。当初計画では目的に合致した新たなデータ形式を設計することを目標としていたが、ASMにはIMOおよびIALA等の機関においてすでに多数の国際規格が策定されており、これら既存のデータ形式の中に所望する用途に適うものがある限りは新たなデータ形式を提案することは推奨されていない。ASMには電子海図上に円や矩形で領域を動的に示すことを想定した形式があるが、実際に使用されている例は報告がないためAUV運用における応用として実装を進める。 AUV以外で近年配備が進んでいる海洋観測システムとしては、自己浮上型海底地震計や深海探査機「江戸っ子1号」のような自航しない水中観測機などがあり、これらも長期間洋上を漂流する可能性がある。また、AUV等の観測を実施する際は事前に海域を管轄する漁協や海上保安庁へ調査実施の届け出を行なうが、大雑把なエリアを通達するのみで、実際に探査機を展開する具体的位置や、浮上位置・時間等を動的に周囲へ伝える方法はない。本研究を続行することで、船舶航行の安全に配慮した水中機器探査の手法を提案することができる見込みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AISによる情報の配信のための機器が必要であるが、申請時に購入を予定していた装置にはASMデータを送信する機能が搭載されておらず所望する実験ができないことが判明した。そのため、機種選定をやり直し具体的な調達手続きを進めたが、AIS装置を購入することは導入コストおよび法律上の問題を考慮すると妥当ではないという結論に達した。この一連の調査・確認手続きに時間を要したためAIS機器と併せて使用するソフトウェアの開発に遅延が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
AISデータ送出用のソフトウェア開発に関しては、メーカーの協力により機器レンタルという形で機器を導入し実施する見込みである。実海域での運用試験については、AUV運用や研究航海等で用いる船舶に搭載されたAISにアクセスすることを前提に、データ入出力が可能なパイロットポートより操作を行なえるよう開発を進める。 また、過去およびこれからの運用で得られた潜航データに基づき、既存のASMデータ形式を流用する方策を検討するとともに、機能に不足が確認された場合は新たなデータ形式を策定することも視野に入れる。併せて浮上および漂流の位置を推定する手法を考案するとともに、既存の衝突回避法から有望な手法を選定し、適用の可能性を調査する。 これらの運用試験を実施するため、本年度実施予定のAUV海上試験の機会を利用してソフトウェア開発を行なう他、大学と附属研究船を用いた共同研究に向けた調整を進めている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調達予定だったAIS送受信機の手配に時間がかかり、断念することとなった。また、それに伴い予定をしていた傭船による実海域でのソフトウェア開発を進める計画も困難となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
AIS機器はレンタルすることにより開発を続行する。実際にAISを搭載している船舶における試験が必要であるため、協力が得られる機関への出張を実施する。
|