研究課題/領域番号 |
16K18329
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
中村 真由子 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (10762057)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 舶用ディーゼル機関 / 多環芳香族炭化水素 / 粒子状物質 / 排ガス / 急速圧縮装置 |
研究実績の概要 |
H28年度は①急速圧縮装置から燃焼後のガスおよび粒子状物質をサンプリングする装置の作成、②模擬燃料作成のための溶解度の確認、③分析におけるブランク・前処理の検討、④模擬燃料を用いた実験を実施した。①急速圧縮装置の燃焼室にステンレス管を接続し、フィルタを経由してからテドラーバッグに捕集することとした。生成されるガスの濃度は、低濃度と予想されたため、テドラーバッグでのサンプリングとした。②模擬燃料の基材となるn-パラフィン(n-トリデカン、n-ヘキサデカン)へのPAHs(ナフタレン、フルオレン、ピレン)の溶解度を確認し、高いもので10%、低いもので3%程度溶解することがわかった。③捕集したフィルタはソックスレー抽出器によって抽出し、濃縮、固相抽出で分画後、GC/MSによる分析を行うこととした。ソックスレー抽出のブランク値を確認した。またガスの分析にはテドラーバッグ捕集の後、GCによって分析を行うこととした。テドラーバッグの前処理およびブランクの確認を実施した。④安定した噴射ができることが既知の模擬燃料(ヘキサデカンと1-メチルナフタレンの混合燃料)を用いた急速圧縮装置による燃焼および排ガスサンプリング実験を実施した。急速圧縮装置からのサンプリングは、ポンプを使用せずとも、シリンダによる押し出しで可能であることがわかった。フィルタ捕集はシリンダによる押し出しの速度を遅くしても破れる事例があった。また捕集量が極微量であるため、数回分の排ガスを捕集する方法をとることとした。テドラーバッグによるガス体の捕集は概ね順調である。GCによる分析によって、模擬燃料以外の成分も検出され、燃焼によって分解もしくは生成が起こっていることがわかった。また、1-メチルナフタレンと考えられるピークも確認され、未燃の燃料が排ガス中に含まれることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度に予定していた急速圧縮装置による実験で実施できていないものがある。その理由は、計画していた模擬燃料のパラフィン成分であるn-オクタデカンおよびn-ヘキサデカンの融点や粘度の特性から安定した噴射ができない可能性が伺えたことである。初計画ではn-トリデカンとしていたが、舶用燃料の模擬としてはより高分子の炭化水素が適当であるため、計画を変更して推進していた。噴射系統を高分子の炭化水素が噴射できるよう改良する方向で計画をしているが、安定した燃料噴射が確実なn-トリデカンで系統的な実験を行う計画を立て直した。よって、n-トリデカン使用のための準備および噴射系改良の計画が必要となったため、実施に遅れが生じている。ヘキサデカンは単体での安定した噴射は現状では難しいが、1-メチルナフタレンを混合すれば噴射できることがわかっているため、ヘキサデカンと1-メチルナフタレンを混合した模擬燃料によって実験を実施した。サンプリングは粒子状物質をフィルタ、フィルタを通過したガスはテドラーバッグで捕集を行った。サンプリング装置の問題点は、フィルタまでの配管内での沈着、フィルタが破損する事例があること、1回の燃焼で生成される粒子状物質が極微量であることからGC/MSでの検出が難しいことが予想され、改良およびサンプリング時の工夫を検討中である。GCによるテドラーバッグ内のガス分析は概ね順調である。テドラーバッグの前処理およびブランクの確認を実施し、分析に問題ないことがわかった。GCによる分析では模擬燃料以外のピークも確認され、燃焼の過程で分解もしくは生成されていることが予想された。同定に及ばなかったピークの確認がGC分析の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で報告したとおり、実施計画がやや遅れているため、研究計画を再編し、推進を行う。まずは前年度に実施できなかった実験を行い、模擬燃料組成と排ガス組成の系統的な比較をする。燃料は主にn-トリデカンを使用し、PAHsとの混合燃料を作成し系統的な実験を実施する。n-ヘキサデカンについては1-メチルナフタレンを混合した場合、噴射が可能なことがわかっているため、n-ヘキサデカンについては噴射できる燃料性状での実験を実施することとする。平行して融点が高い燃料の実験については噴射系の改良を計画している。分析に関しては、昨年度でブランクの確認、分析手順の確立は出来たが、回収率の確認が未実施のため、燃焼実験の前に回収率の確認を実施する。またGC分析による未知のピークの同定を実施する。分析関連の問題(回収率・未知のピーク)が解決し、模擬燃料と排ガス組成の関係が系統的に明らかにすることを早急に実施する。次段階として、燃焼の条件を変えた際の模擬燃料と排ガス組成の関係を明らかにする実験を計画している。使用する燃料は、前段階の実験の結果から選択する。燃焼の条件はなるべく実エンジンに近い条件を目指すが、排出されるガスや粒子状物質が分析に適した濃度であるか懸念されるため、実エンジンよりも燃焼が悪く、排出されるガスや粒子状物質が増加すると考えられる条件も候補に入れ、実験計画を立てることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する燃料の再検討に伴い、模擬燃料作成の際の溶解度の確認等を行っていたため、燃料の確定が出来ず、燃料の購入が遅れているためである。実験用燃料の大量購入が来年度に繰り越している。上記理由に伴い、実験実施回数が計画よりも減少したため、燃料代や分析消耗品が削減されたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
使用する燃料が確定したため、次年度は燃料代に使用する計画である。サンプリング装置の改良も必要であるため、配管や継ぎ手等の周辺部品の購入を計画している。分析対象が微量であり、高い分析精度が必要であることが予想されるため、分析に関わる消耗品等を購入し、精度を高めるために使用することを計画している。また噴射系の改良への使用も計画している。
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