平成29年度は、主に(1)デジタル岩石を用いたCO2圧入に伴う地震波減衰変化の推定および(2)精密制御震源により発生させた連続地震波データから地震波の時空間変化をモニタリングする手法の開発を行った。 (1)異なるCO2圧入パラメータを用いた流体シミュレーションにより作成したCO2分布が異なるデジタルモデルに対し、弾性波動シミュレーションを適用することで、弾性波の減衰(減衰定数およびQ値)を推定した。その結果、圧入したCO2が増加するにつれて、減衰が大きくなる傾向が得られた。また同様のCO2飽和度であっても、異なる減衰値が得られた。これは孔隙中に分布するCO2の不均質度合いの違いを反映していると考えられる。この減衰値の感度は弾性波速度の感度とは異なることから、弾性波速度と減衰の両方を利用することで、不均質なCO2分布を詳細に推定できる可能性がある。 (2)カナダのアクイストアCCSフィールドに設置された精密制御震源による地震波データから、地震波速度を空間的に推定およびモニタリングする手法を開発した。観測データに空間ウィンドウを適用することで、1台の震源から対象地域の3次元的な速度情報を推定することに成功した。この手法を用いて速度変化をモニタリングした結果、震源周辺の点的なモニタリング結果(平成28年度に実施)同様、季節変動を確認でき、提案手法によりその空間分布を明らかにすることができた。さらに温暖な季節においては、高い時間解像度で高精度に浅層をモニタリングすることができた。これらの結果は、提案手法が深部貯留層モニタリングにおける季節変動の影響の低減や、圧入したCO2の漏えいなどの突発的な貯留サイトの変動の特定に利用できる可能性を示唆している。
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