研究課題/領域番号 |
16K18338
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
辻村 亨 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00732744)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 電子サイクロトロン加熱 / プラズマ加熱 / 大型ヘリカル装置 / リアルタイム制御 / 偏波 / ミリ波 |
研究実績の概要 |
本研究は、核融合プラズマ実験におけるプラズマ加熱法の一つである電子サイクロトロン加熱(ECH)の入射条件の最適化を目指すものである。大型ヘリカル装置(LHD)において、ECHの入射偏波をFPGA (Field Programmable Gate Array)を用いてリアルタイムで制御するシステムを開発し、LHD実験において原理実証を行った。放電中に時間発展する電子密度分布に対して最適な入射偏波をリアルタイムで計算し、偏波器を制御することで、実験的に加熱効率を最大化することができた。放電後に得られるトムソン散乱計測結果とプラズマ平衡の情報を元に、正常波(O)モードと異常波(X)モードの励起率について解析した結果、制御モデルの基となっている数値計算モデルの有効性を示すことができた。 入射偏波だけでなく入射方向をリアルタイム制御し、時間発展する電子密度分布や電子温度に対して、目的の加熱位置を実現するための制御系ハードウェアを構築した。また制御対象である入射アンテナの動作時間特性を調べた。 上記制御系の応用として、入射インターロックシステムを開発し、電子密度や不純物発光ラインを用いたプラズマ状態監視を行うことで、非効率な加熱条件時にジャイロトロンをON/OFF制御できるようにし、プラズマ加熱の安定的なオペレーションを可能とした。 3次元full waveシミュレーションコードを開発し、入射偏波が電子サイクロトロン波の伝搬に与える効果について初期結果を理論的に示した。円偏波の回転の向きによって、伝搬軌道が異なることを示した。この初期結果は光のスピン角運動量と軌道角運動量の相互作用から生じる効果(光のスピン・ホール効果)であることを、磁化プラズマ中におけるプラズマ波動の伝搬においても示したことを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいて研究が進展していると考えている。 LHDプラズマにおいて、ECHの入射系をFPGAを用いてリアルタイムで制御するシステムを順調に開発することができている。放電中にリアルタイムで利用できる限られた計測から、ECHの入射偏波の最適化を求めて制御した結果と、放電後に得られる計測から再計算した結果とが良い一致を示しており、制御モデルの有効性を示すことができている。FPGAを用いたリアルタイム制御のやり方を入射方向や入射インターロックの制御にも応用しているところである。 よりモデル精度の高い3次元full waveシミュレーションコードを開発したことで、入射偏波が電子サイクロトロン波の伝搬軌道に与える効果について初期結果を理論的に示したことは予想していなかった結果である。この効果がLHDプラズマのような磁化プラズマにおいてECHの入射条件の最適化にどの程度寄与するのか、という新たな課題が発生したが、本研究全体として見れば、研究が順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
電子サイクロトロン波の屈折や吸収に影響を与える電子密度や電子温度の径方向分布に対して、ECHの入射条件の最適化を行うモデルを構築し、LHDプラズマ実験に適用する。そのデータベースの大きさと上限のあるFPGAのメモリ容量との兼ね合いに注意しながら、実装可能なモデルを作成する。 放電後に得られるトムソン散乱計測において、より信頼度の高い電子温度・密度分布が与えられるようになり、光線追跡結果にも反映されるようになっている。この解析結果と実験結果とを比較し、実験に使用する制御モデルの有効性を検証する。 3次元full waveシミュレーションコードをさらに改良し、入射偏波が電子サイクロトロン波の伝搬に与える影響をさらに詳しく評価する。特に伝搬媒質である磁化プラズマの磁場分布・密度分布にどのように依存しているか、あるいはどのような条件の時に、この新しい効果が発現しやすいかに着目しながら解析を行い、LHDプラズマなどでの原理実証実験の可能性について議論する。
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