研究課題
本研究はヘリカル型核融合原型炉に対する予測性向上を目的に、プラズマが装置壁に接するダイバータプラズマやそれと炉心の間に位置するプラズマ(以下まとめて周辺プラズマ)の分布等を、実績ある計算コードEMC3-EIRENEを用いてより正確に記述するモデルを開発するものである。本年度はLHD不純物輸送モデリングに関連してボロメータおよび分光計測から不純物の情報を引き出す検討を進め、また異なる装置でのEMC3-EIRENEモデリングを共同研究で進めた。以下にこの二つについて述べる。前年度に実施した不純物パフ時のモデリングにおける炭素不純物の挙動を調べるため、新たにCIVラインの分光計測結果を用いた。対象とした放電に関してはパフの前後で発光強度に大きな違いがないことが明らかになり、EMC3-EIRENEによる解析によると、ネオンの放射冷却によって不純物に働く熱力が低下し、不純物が排出されやすい状況となり、それがネオンによる炭素スパッタの増加を打ち消していることが示唆された。今後より定量的な比較研究を進めることとした。これらの成果については、第27回International Toki Conferenceでポスター発表(P1-22)を行った。異なる磁場配位への応用として、京都大学のHeliotron J装置を対象に、当該装置初となるEMC3-EIRENEモデリングを京都大学の大島助教との共同研究により行った。Wisconsin大学からグリッド作成コードFLAREの導入を行い、標準配位のグリッドを開発し、必要な解像度の算定と試験計算を行った。この成果は共著論文としてPlasma and Fusion Researchesに掲載が決まっている。
2: おおむね順調に進展している
窒素パフのモデリング改良を年度開始時に予定していたが、計測とのよい一致が得られているネオンパフに絞って、計測との比較手法や新たな計測との比較を含めた検討を行う方が有意義であると判断し、研究計画を修正した。また、原型炉を見据えると定量性の確保が重要であるため、新しい物理要素やFFHR-d1のグリッド開発よりも計測をいかに利用するか、またそのための比較手法の研究を中心とした。その結果、実績の概要で述べたように、従来のモデリング方法では不足していた炭素不純物の情報や炉心の寄与など、新たな重要な物理要素および計測結果の利用方法へとつながった。一方で定量的な比較に必要な計測データの解析に不足があることがわかり、研究期間の延長を行ってボロメータ計測との定量的比較研究を進めることとした。定量性の議論によって、本研究課題全体にわたる確度向上が期待される。また、当初予定に加えてHeliotron JおよびJT-60SA装置のモデリング共同研究が進展し、前者では論文掲載が決まるとともに、両者とも次回のPlasma Edge Theory国際ワークショップでの発表を予定している。
前項目で述べたように、ボロメータ計測との直接的な定量的比較を中心に進める。具体的には、LHDプラズマの全放射パワーの算定の元になっている3-Oポートのボロメータに入射する放射パワー自体と、その計測装置の座標・視野・検出器面積等を使ってEMC3-EIRENEの結果から計算された入射パワーの比較を行う。ボロメータ計測グループとデータ処理方法について議論を始めている。また、複数あるボロメータを組み合わせることでより精度のよい比較を行うことを計画している。これは、実験において指標として使われている全放射パワーの算定の精度向上にもつながる重要な成果になると考えている。定性的なデータに基づくモデリングを可能とすることで、計算結果の妥当性あるいは不確かさの評価が行いやすくなることが期待される。また、JT-60SAやHeliotron Jのモデリング共同研究を継続し、複数の装置を横断した輸送モデリングの基盤を構築するとともに、各装置固有の特徴(高性能プラズマであるトカマクや、異なる複数の磁場配位が可能なヘリカル)に関するモデリング研究を行う。
年度当初にEMC3-EIRENEコード開発者であるDr. Fengの訪問旅費を想定していたが取りやめ、同時に予定していた数値計算用計算機の導入に主に使用した。また、研究期間延長に伴い、成果発表として22nd International Stellarator and Heliotron Workshopへの参加旅費を次年度使用のために繰り越した。
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Plasma and Fusion Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Plasma Physics and Controlled Fusion
巻: 60 ページ: 084005
10.1088/1361-6587/aac9ea