研究課題/領域番号 |
16K18342
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
瀬戸 春樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉システム研究開発部, 研究員(任常) (90733692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数値手法開発 / 簡約化MHDモデル / エッジーロカライズドモード / L/H遷移 |
研究実績の概要 |
2016年度のBOUT++コードの数値スキーム検証で明らかになった非共鳴(トロイダル軸対称)成分に対する取り扱いに関する問題点の解決を行った。 具体的には以下の通りである。1)従来の実装では非共鳴成分に対してフルート近似を用いた径方向1次元のポアソンソルバーを用いていたため静電ポテンシャルの固有関数にポロイダル方向に強い数値振動が発生していたが、同ソルバーの2次元化を行い固有関数のポロイダル空間構造を表現できる手法を実装した。2)従来の実装では対流微分の離散化に風上差分の一種であるWENO法が利用されていたが、本手法をプラズマコア領域のバルーニングモード型不安定性に適用すると、三波結合を記述する対流項に風上方向の時間変動に起因する数値非線形性が混入して短波長側にエネルギーを送る非物理的なエネルギーチャンネルが形成されて数値不安定性を駆動することを明らかにした。この問題は擬スペクトル法に基づく対流微分スキームを実装し解決できることを確認した。なお、対流微分に関する問題に関しては、線型性を保証する離散スキームを適用することが本質であることを明らかにした。考案した手法の検証のために円形断面平衡のELMシミュレーションを行い、1)非線形飽和後に系のエネルギーの良好な保存特性が得られること、2)非線形飽和後に非共鳴成分の大域的な構造が渦度と電流の分布に確認できること、3)ELMによるエネルギー放出量が格子解像度よらずに一定の飽和レベルへと収束することを確認した。これらの成果は渦度方程式の非共鳴成分で記述される平均流、帯状流とプラズマ回転の力の釣り合いが重要であるL/H遷移シミュレーションを遂行する上で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L/H遷移を記述するために必要となる渦度方程式の非共鳴成分の整合良い取り扱いを実現するための数値手法開発を行ったため。開発した数値手法の検証ではトロイダル回転を取り入れたL/H遷移のシミュレーションに必要となる4場(渦度、磁気ポテンシャル、圧力、イオン平行流)の簡約MHDモデルによる勾配駆動型ELMシミュレーションを行い、1)方程式系のエネルギー保存特性が良好であること、2)非線形飽和後に非共鳴成分の帯域的フローが形成されることが確認できた。これらは熱源駆動型の簡約化MHDモデルによるL/Hシミュレーションを行う際に重要となる1)熱源・シンクを印加していない状況で系のエネルギーが保存するかを確認する、2)帯状流シアーによる乱流レベルの低減が起こるかを検証する、を行う際に有用な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
L/H遷移シミュレーションを遂行する上で必要となるシミュレーションコード開発は概ね完了したため、本年度は熱源駆動型簡約MHDモデルを用いたL/H遷移シミュレーションに着手する。また、本年度開発を行った数値手法の動作検証として行った勾配駆動型のELMシミュレーションを発展させて、帯状流とELMクラッシュ時の放出エネルギー量の関係を調査する。帯状流存在化では圧力の陽動フィラメントが帯状流シアーにより剪断される描像が得られており、この問題設定は乱流構造が平均流と帯状流のシアー構造により剪断されて乱流レベルの低減が起こりL/H遷移に至るモデルを検証する本課題の遂行にも意義がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初執行計画では100万程度を計算資源購入費として計上していたが、2017年度はIFERC-CSC-Selene計算機から業務遂行に十分な計算資源の提供を受けられたため、計算資源の購入を変更してデータ解析のためのPCを購入した。繰越金は九州大学の大型計算機の資源購入と共同研究者との研究打ち合わせのための旅費として使用する計画である。
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