全ての核分裂生成物核種を陽に扱い原子炉過渡解析を行うモデルTM-EFP(Transient Model with Explicit representation of Fission Products)について、昨年度実施したTM-EFPの空間依存問題への拡張のための定式化(部分行列指数法、以下PME法と呼称)に引き続いて、今年度はPME法の検証作業を実施した。時間メッシュ分割を詳細にすることによって厳密解に漸近することが期待される一般的な差分法(シータ法)を参照解とした比較を行い、時間メッシュの細分化に伴いPME法の計算結果が参照解に漸近することを確認し、PME法の妥当性を確認した。また、粗い時間メッシュ分割ではシータ法と比べて計算精度が向上することを確認した。 TM-EFPの有効性、有用性を確認するため、事故時にガス状の核分裂生成物核種が燃料から漏洩して体系から失われるような空間依存の過渡問題の計算を行った。その結果、ガス状核分裂生成物核種の漏洩により原子炉出力の過渡応答が影響を受けること、影響の度合いは漏洩のしやすさいに依存すること、核分裂生成物核種の濃度の時間変化は当該核種の特徴(崩壊半減期や漏洩に関わるか否か)に依存することを明らかとした。 加えて、TM-EFPでは全ての核分裂生成物核種を取り扱うことによる、計算負荷の増大が問題となる。そこで、核分裂生成物核種間の崩壊・生成を規定する行列を作成し、その行列を利用することで、原子炉の過渡応答に影響する核分裂生成物核種を抽出する方法を考案した(低次元TM-EFP)。これを適用することで、計算負荷の増大を抑制できることが分かった。
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