研究課題/領域番号 |
16K18349
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片岡 隆浩 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (40509832)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | X線照射 / 脳 / アスコルビン酸 |
研究実績の概要 |
低線量放射線被ばくは脳卒中のリスクを高める可能性のあることが報告されている。本課題では,健康不安の解決の一助とすることを目的とし,それら疾患に寄与すると考えられる酸化ストレスに着目し,低線量被ばく後の脳の酸化ストレスの程度および酸化ストレスの受けやすさ,また,その簡便な予防法について検討する。平成28年度では,マウスにX線照射した後の脳中の抗酸化酵素・物質について,線量と照射後の経過時間の変化特性について検討し,低線量X線照射はマウス脳中の抗酸化機能を亢進する可能性を示唆した。そこで,平成29年度では,低線量X線照射(0.5Gy)とアスコルビン酸の併用した場合の脳の抗酸化酵素の変化特性などを検討した。X線照射2時間後にアスコルビン酸(500mg/kg body weight)を腹腔内投与しその4時間後に炭酸ガスの過剰吸入により安楽死後,脳を摘出した。また,X線照射のみ,アスコルビン酸投与のみも実施した。その後,抗酸化酵素・物質などを測定した。その結果,X線照射のみ,アスコルビン酸投与のみをした場合,脳中のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性がそれぞれ約40%程度増加した。他方,X線照射とアスコルビン酸投与を併用した場合,SOD活性の増加は見られなかった。同様に,総グルタチオン(GSH)量は0.5Gy照射により増加傾向があったが,アスコルビン酸投与と併用した場合,GSH量は対照に比べ増加しなかった。以上の所見より,アスコルビン酸を投与しても,低線量X線照射による抗酸化機能の亢進の併用効果はない可能性が示唆できた。しかし,ラドン吸入による抗酸化機能の亢進はアスコルビン酸やαートコフェロール投与により相加効果のあることが報告されていることから,アスコルビン酸を投与するタイミングが重要である可能性が示唆できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線照射により抗酸化機能が更新することが報告されていたが,アスコルビン酸も同様の作用があるため,併用した場合に抗酸化作用の相加効果のあることが想定されていたが,それとは異なる結果になった。しかし,過去の研究成果より,アスコルビン酸投与のタイミングが重要である可能性も明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はマウスの脳に酸化ストレスを与え,そのマウスにX線照射,アスコルビン酸投与,X線照射とアスコルビン酸投与の併用した場合の酸化ストレスの抑制効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画通りに消耗品を購入したところ,端数が生じたため。 次年度の消耗品と合わせて執行する予定である。
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