研究実績の概要 |
N,O-ハイブリッドドナー系配位子を合成し、ランタノイドとの錯体の単結晶X線構造と溶液中の錯体構造を放射光XAFSで調べた。併せてUV滴定による熱力学データ(酸乖離定数、錯形成定数)の取得、溶媒抽出実験により錯体構造と配位強さの相関を調査した。原子力再処理と同様にドデカン/硝酸系で一連の3価ランタノイド元素、6価ウラン、4価トリウム、3価アメリシウムの抽出実験(配位子濃度依存性、酸濃度依存性等)を行った。例えば対称な構造を有する1,10-フェナントロリンや2,2’ -ビピリジルではランタノイドの元素番号の増加、即ちイオン半径が小さくなり表面電荷密度の増加に伴いランタノイドと配位窒素の原子間距離が小さくなり、錯形成定数は単調増加した。一方で非対称な構造を有する配位子、例えばフェナントロリンの非対称位置にアミドを介してメチル基とトリル基を有する配位子N-メチル-Nトリル -1,10フェナントロリンカルボン酸アミド(PTA)では、ランタノイドイオン半径が小さくなるにつれ錯体の量論比が変化し、元素間距離、分子の二面角祷が変化して錯形成定数はネオジム付近で極大値を持った。これは非対称位置のアミド酸素がランタノイドと強く配位し、嵩高いフェナントロリンの窒素がより離れた位置で相互作用するためであると示唆された。選択的に特定f元素を認識・分離するための配位子の分子設計には、三次元的な視点から配位点や嵩高い官能基を配置することが重要であることを示した。一連のf元素(ランタノイド、アクチノイド)での抽出実験では多様な抽出挙動が得られた。本研究で行ったような錯体構造と配位強さの相関を調べて分子設計に生かす手法により、今後より高い性能のf元素分離用配位子の開発を行いたい。試験管スケールの抽出分離試験から連続抽出実験に供するための合成のスケールアップとともに遠心抽出器装置の整備まで実施出来た。
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