研究課題
同位体分離は核分裂用Uの濃縮や、中性子吸収能力の高いBの濃縮に利用されている等、有益な物質を生産するために必要不可欠な技術であるが、問題点も多い。それは同位体を分離するためには化学的な性質が同じであるために質量数の差異を用いる方法しかないことが主因である。遠心分離を用いた同位体分離については、分子の移動度が高い気相を用いたガス遠心分離法が実用化されている。この方法では、分子濃度が希薄であるため、生産量の向上には装置の大規模化が必要であり、莫大なコストが伴う。近年では、医療においても同位体への需要が高まっている。そのため高効率で経済的な同位体生産方法が望まれている。そこで我々は液相での遠心分離に着目した。液相を用いた遠心分離法では分子密度も高く、拡散係数が小さいことから安全で高効率な同位体遠心分離が期待できる。液相での遠心分離その場観察を実現するために試料とNMR 信号検出器を同時に回転させる実験システムを考案し、NMR装置を用いた遠心分離その場観察システムの開発に成功した。遠心管の中にコンデンサー、測定コイルと内側誘導コイルで共振回路を構成し、コンデンサーの容量を調節し測定周波数に同調する。これを外側誘導コイル内に挿入し、相互誘導を通じて高速回転共振回路にラジオ波を誘導し、NMR測定ができる仕組みになっている。外部磁場は回転軸と平行に印加する。このシステムにより回転半径方向の局所的濃度変化をリアルタイムに観測することに成功した。水溶液中の同位体分離の極端な模型としてNaI-CsI混合溶液(NaI:CsI=3.3mol/L:1.66m ol/L )を用いた遠心分離実験を行い、Na濃度の回転数依存性を液相その場観察することに成功した。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Applied Physics Letters
巻: 110 ページ: 072409
https://doi.org/10.1063/1.4976998
Journal of Magnetism and Magnetic Materials
巻: 442 ページ: 329-331
10.1016/j.jmmm.2017.06.101