研究課題/領域番号 |
16K18354
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松下 洋介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80431534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 微粉炭 / チャー / 燃焼 / ガス化 / 熱移動 / 物質移動 / 詳細化学反応 / 反応モデル |
研究実績の概要 |
研究計画に従い,瀝青炭および褐炭を対象に,FLASHCHAINを用いて,常圧,不活性雰囲気,昇温速度100,000 K/sの条件において,揮発分放出速度を推算するとともに揮発分放出速度パラメータを決定した.また,瀝青炭と褐炭を対象に熱天秤を用いて酸化反応であるChar-O2に加え,ガス化反応であるChar-CO2およびChar-H2Oの反応速度を測定するとともにこれら不均一反応の速度パラメータを求めた.以上により,研究計画どおり,後述する不均一と均一反応を伴う単一微粉炭チャー粒子周りの熱・物質移動解析を実施するための入力パラメータを取得することができた. 不均一反応を伴う単一微粉炭チャー粒子周りの物質移動解析を実施可能なIn-houseコードに均一反応であるCOの酸化反応およびエネルギー保存式を追加し,不均一および均一反応を伴う単一微粉炭チャー粒子周りの熱・物質移動解析を実施可能なコードに拡張した.均一反応を考慮する場合,考慮しない場合と比較して,チャー粒子周りの酸素濃度が低下し,粒子の表面温度が大幅に上昇した.これは,COの酸化反応により気相で酸素が消費され,この反応熱により粒子が加熱されるためである.また,予想どおり粒子表面温度について解析結果は実験結果を過大評価した.そこで,実際に生じる現象を表現するため,吸熱反応であるChar-CO2ガス化反応を追加するとともにふく射伝熱解析を連成した結果,粒子の表面温度について解析結果は実験結果とほぼ完全に一致した.そのため,不均一反応として微粉炭チャーの燃焼は酸化反応のみで進行するのではなく,常に酸化反応とガス化反応が並発して進行すると考えられる.この傾向は酸化反応速度が大きくなり,チャー粒子表面の酸素濃度が低下する高温ほど顕著になると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,a)揮発分放出速度の推算およびチャーの酸化・ガス化反応速度の測定と定式化,b)詳細化学反応を考慮した単一微粉炭粒子周りの熱・物質移動解析,c)詳細化学反応を考慮した微粉炭燃焼・ガス化のモデル化,d)詳細化学反応を考慮した CFD による微粉炭燃焼解析に大別され,平成28年度にa)とb)を,平成29年度にc)とd)を実施する予定であった.a)についてはすでにすべて研究計画どおり実施済みであり,微粉炭燃焼解析に必要なモデルパラメータを決定した.b)については均一反応に総括反応モデルを用いた解析を実施するとともに,総括反応モデルの感度解析を実施した.その結果,用いる総括反応モデルによって解析結果が異なることから,当初の研究計画どおり,詳細化学反応の導入が必要不可欠であることがわかった.現在は均一と不均一反応を伴う単一微粉炭チャー粒子周りの熱・物質移動解析のコードに詳細化学反応を取り込んでいるところである.一方,d)詳細化学反応を考慮した CFD による微粉炭燃焼解析の解析対象を決定し,簡易的な微粉炭燃焼解析を実施した.さらに,平成29年度に実施予定である微粉炭燃焼モデルの開発に先立ち,乱流燃焼のモデリングで有名なLoughborough UniversityのProfessor Malalasekeraを訪問し,有意なアドバイスをいただいた.そのため,b)詳細化学反応を考慮した単一微粉炭粒子周りの熱・物質移動解析の進捗に若干の遅れを生じているものの,d)詳細化学反応を考慮した CFD による微粉炭燃焼解析の解析対象を決定し,簡易的な微粉炭燃焼解析を前倒しで実施していることから研究全体としてはほぼ予定どおりに進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は均一反応を考慮する足がかりとして,COの酸化反応について総括反応モデルを用いた.モデルの感度を確認するため,異なる2つの総括反応モデルを適用した結果,解析結果に若干の差異が生じた.そのため,当初の研究計画どおり,均一反応には,計算負荷は高いものの,調整パラメータを一切必要としない詳細化学反応が必要であると考えられる.平成29年度は引き続きb)詳細化学反応を考慮した単一微粉炭粒子周りの熱・物質移動解析のコードの完成を目指す.なお,詳細化学反応の解法には当初の研究計画どおりLSODEあるいはVODEを用いる予定である.完成させた不均一および均一反応を伴う単一微粉炭粒子周りの熱・物質移動解析コードを用い,微粉炭燃焼場として考えられる幅広い範囲における粒子の昇温速度と温度,ガスの温度と酸化剤・ガス化剤の分圧の条件 下において,求めた各化学種生成・消失速度をデータベース化する.ここで,粒子温度,ガス温度,酸化剤・ガス化剤の分圧の6つのパラメータを入力すると,粒子周り近傍の 詳細化学反応を考慮した各化学種の"見かけの"生成・消失速度を決定することができるデータ ベースにする予定である.最後に,平成28年度に選定した解析対象において微粉炭燃焼解析を実施し,燃焼ガスと微粉炭粒子の速度と温度,燃焼ガスの組成などを実験結果や他の研究者の解析結果と比較することで,構築した微粉炭燃焼モデルの妥当性を検討する.解析対象は現在微粉炭燃焼解析のターゲットフレームとして位置づけられており,豊富な実験結果だけでなく,他の研究者の解析結果と比較することができるため,平成29年度に開発する微粉炭燃焼モデルの妥当性の検討に最適な解析対象であると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額であり,ほぼ予定どおりに執行した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額であり,次年度も研究計画に基づき執行する予定である.
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