研究課題/領域番号 |
16K18356
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石川 亮佑 新潟大学, 自然科学系, 助教 (50637064)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペロブスカイト太陽電池 / 貧溶媒含浸法 / グラフェン / 真空張り合わせ / タンデム太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「有機-無機ハイブリッドタンデム太陽電池のためのグラフェン電極の開発」である。ペロブスカイト材料をトップセルとしたタンデム太陽電池は低コストかつ高効率な次世代太陽電池として非常に着目されている。しかし、セル全体の光学的な設計やボトムセルとの電気的な接合技術については未成熟でタンデム化したときの損失が大きい。そこで本研究では、広い波長範囲で高い光透過率を有し、良好な電気的接合が期待できるグラフェン電極を有機-無機ハイブリッドタンデム太陽電池の接合層として適用することを提案し、低コスト・高効率・長期安定な太陽電池のための基盤技術を確立する。2年目となる本年はグラフェンを有するペロブスカイト太陽電池の作製し、その特性と安定性を検証することを目指した。まずは正孔輸送層として一般的なspiro-OMeTADを用いた、典型的なCH3NH3PbI3ペロブスカイト太陽電池の作製プロセスを確立した。貧溶媒含浸法を改良することでプロセスウィンドウが広く再現性の高いペロブスカイト層の製膜法を新たに開発した。次に真空張り合わせ装置を用いてペロブスカイト層上にグラフェンをドライプロセスで転写する手法を開発した。これにより正孔輸送層フリーなグラフェンを有するペロブスカイト太陽電池を作製することに成功し、変換効率7.1%を達成した。またグラフェンを有する太陽電池の安定性を評価した結果、spiro-OMeTADと比較してグラフェンを有する太陽電池が安定性に優れていることが示された。これはグラフェンが水や酸素の浸入を防ぎ、ペロブスカイトが分解され太陽電池特性が劣化するのを抑制したためだと考えられる。今後は、グラフェンを有する太陽電池の効率と安定性を改善していき、最終的なタンデム太陽電池に応用していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度確立したグラフェンへのMoO3によるドーピング法については論文(Appl. Phys. Express 11, 045101 (2018))にまとめた。2年目の目標はグラフェン電極を有するペロブスカイト太陽電池の開発と安定性評価としており、これに対してはおおむね達成している。現在、ペロブスカイト層の作製法について論文投稿中で、グラフェンを有する太陽電池についてはさらなる効率と安定性の改善を試みて論文などの成果にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェンを有する太陽電池のさらなる効率と安定性を改善した後に、グラフェンのトンネル接合層としての有用性を示し、最終的なタンデム太陽電池に応用していく。ボトムセルとしては当研究室の化合物系太陽電池や他研究グループの結晶シリコン太陽電池を想定している。本研究により、低コスト・高効率・長期安定な有機-無機ハイブリッドタンデム太陽電池のための基盤技術の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年4月分の支払いは平成30年度分に計上するため。実際は全額執行済みである。
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