研究課題/領域番号 |
16K18357
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研究機関 | 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 |
研究代表者 |
藤木 淳平 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 研究員 (20530190)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーボン / 窒素官能基 / 水蒸気吸着 / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、窒素含有カーボンの特異的な水蒸気吸着性能に着目し、カーボンの細孔特性および表面化学構造が水蒸気吸脱着特性に及ぼす影響を解明することで、高性能吸着ヒートポンプ・デシカント用多孔質カーボンの開発に繋がる知見を得ることを目的とする。本年度は水蒸気吸着機構の解明のための量子化学計算の計算環境整備と窒素含有カーボン表面における水分子の吸着状態計算の一部を実施した。まず、調製した窒素含有カーボンのXPS N1sスペクトルを解析した結果よりカーボン表面に存在しうる窒素系官能基を推定し、ピリジン系、アミン系窒素など9種類の窒素官能基を吸着状態解析の計算候補として選定した。その結果に基づき分子モデリングソフト上に各種窒素官能基を有するカーボン表面モデルを作成し、B3LYP/6-31G+d,pレベルの密度汎関数法により構造最適化を行った。吸着状態の解析には、各分子モデルとのエネルギー差から相互作用エネルギーを算出することとし、計算の初期配座として、窒素官能基に対して6種類の配座を採用することで、計算の精度を保つこととした。現在、それらの表面モデルに対して水分子との相互作用状態に関して量子化学計算により解析を進めている。これまでに得られた結果より、窒素官能基を有するカーボン表面では、窒素官能基周りに電子的な偏りが生じ、それに起因して生じる双極子モーメントが水分子の双極子モーメントと相互作用することにより、吸着初期に水分子を吸着するとの推察が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験データに基づく量子化学計算解析を進めているが、計算負荷が想定以上に大きく、長い計算時間を必要としたため。
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今後の研究の推進方策 |
計算環境(ハード面)の強化を行い、遅れを取り戻し、29年度前半までに予定している計算を実施する。後半は計算結果に基づいた性能改良試験の環境を整えた後、試験を適宜実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験によって得る予定であった知見が研究開始時にある程度得られていたため、実験を行う必要がなくなったことに加え、研究進捗状況を考慮して当初予定していた学会発表を取り止めたため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的には、当初の助成金使用計画に沿って予算執行する。ただし、研究進捗状況を考慮すると、計算処理能力の向上が望まれるため、前年度残金相当分程度を計算環境整備にあてる。
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