本研究は、窒素含有カーボンの細孔特性および表面化学構造が水蒸気吸脱着特性に及ぼす影響を解明することで、高性能吸着ヒートポンプ・デシカント空調用多孔質カーボンの開発に繋がる知見を得ることを目的とした。これまでに行った密度汎関数法を用いた水蒸気吸着を促進する可能性のある表面官能基の推算結果に基づき、当該表面官能基量の増大による水蒸気吸着性能向上を図るため窒素含有カーボンの合成法の改良を実施した。昨年度の検討の結果、マイクロ波によるプラズマ放電を利用することで、電気炉加熱に替わる炭化賦活が可能であることを明らかにしたが、プラズマ放電の制御が困難であることから、今年度はプラズマ放電を利用しないマイクロ波を用いたカーボンの合成法について検討を実施した。その結果、調製したプレカーサーに水を少量添加することで、プレカーサーのマイクロ波吸収を向上させ、迅速な炭化賦活を可能にすることを見出した。しかしながら、当該手法は賦活剤の種類によってその有効性が異なり、特定の賦活剤の利用が必要であった。また、作製したカーボンの細孔特性および水蒸気吸着量を評価した結果、当該手法で作製したカーボンは電気炉加熱により作製したカーボンと類似の階層的細孔特性と有効水蒸気吸着量を有することが示唆された。以上の検討より、特定の賦活剤を利用することで、簡便かつ迅速に高性能な窒素含有カーボンが得られるマイクロ波賦活手法を見出した。
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