研究課題
本研究は、サルの随意性眼球運動(サッケード)の系で、小脳神経回路網を同定した後に、訓練したサルで神経活動の記録と破壊実験を組み合わせて、小脳の随意運動制御の動作原理と小脳障害の病態生理の解明を行うことを目的とする。小脳失調中核症状は、「推尺異常」と考えるので、この運動制御異常の病態生理を明らかにし、小脳機能の動作原理を明らかにしたい。本年度は、その基礎となるサッケード眼球運動に関与する上丘から小脳への入力経路を急性実験で同定することを行った。両側上丘のサッケード領域に刺激電極を置き、小脳虫部第VI―VII小葉から、電場電位を記録して、laminar field analysisを行い、苔状線維入力と、登上線維入力の存在部位を同定した。入力のある部位では、同側のみならず、対側上丘から入力が存在した。この苔状線維入力の中継核として、解剖学的方法を加えて検討して、橋核、橋被蓋網様核を介することが明らかとなった。登上線維入力に関しては、対側の下オリーブ核を介しているが、反対側入力に関しては、中脳を介していることが明らかとなった。この回路同定実験と同時に、サルの慢性実験の準備を開始した。これまで、サルの行動実験設備がなかったので、コンピュータープログラムを初めとして、新たに実験設備を構築しなければならなかった。幸い、NIHのWurtzの用いているREXシステムを導入することが出来、それを用いてサルにサッケードの訓練を完成することが出来た。現在、記録用のチェンバーを頭部に植え、電気生理学的・解剖学的方法を用いて同定した経路に沿って、小脳VII葉、室頂核、脳幹バースト細胞、ポーズ細胞でサッケード中の細胞活動を解析する準備中である。
2: おおむね順調に進展している
急性の実験は当初の予定通り進んでいるが、慢性の実験を新たに始めたため、その準備にかなり時間がかかったが、実験全体がようやく軌道にのりだしたところである。
今後この経路を薬理学的方法で遮断し推尺異常症状を起こした後、経路の各部位での神経活動を障害前後で比較し、制御信号の小脳内の流れと機能を明らかにする予定である。
初年度は慢性実験の記録システムを新しく立ち上げるためのプログラム作成等に多くの時間をさいたため、予定していたよりも動物代や消耗品などの使用が少なかったため。
初年度に立ち上げたシステムを二年目、三年目に実際に使用して実験を行う予定なので、動物代や消耗品、機械代として二年目、三年目に使用する予定である。また、得られた成果を発表するための学会への参加したいと考えている。
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Brain structure and function
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神経眼科
巻: 33 ページ: 396-401