(1) フィロポディア長さ制御と樹状突起の空間充填パターンの解析 前年度までにMtss1 がアクチン重合制御因子forminの一つであるDAAM1と生化学的な相互作用を示すことを示していた。またプルキンエ細胞にDAAAM1の恒常的活性化体を導入すると、フィロポディア長の亢進が引き起こされる。したがって、Mtss1 はDAAM1のアクチン重合能を抑制することで、フィロポディア形態形成を制御している可能性が考えられた。本年度は、Mtss1 とDAAM1 の関係をより直接的に示すために、セルフリーシステムを用いて両者の機能相関を調べた。活性型であるc-DAAM1分子を精製し、まばらに蛍光標識したアクチンを加え、精製したMtss1 存在下/非存在下でのアクチンの重合過程を全反射顕微鏡を用いて可視化した。その結果、Mtss1存在下ではアクチン重合スピードが減少する傾向にあることが明らかになった。これまでの結果と合わせ、Mtss1はDAAM1によるアクチン重合活性を負に制御するという結論に至った。昨年度までに得られた結果と合わせて、アクチン制御因子であるMtss1がフィロポディアの長さ制御を介して、樹状突起同士の接触頻度を調整すること、また接触依存的な退縮の頻度変化が樹状突起の空間パターンへ影響を与えることが明らかになった。本研究で得られた成果をCell Reports 誌に発表した。 (2)フィロポディアによる樹状突起方向性制御の解析 前年度に引き続き、樹状突起-軸索間の接着因子の同定を試みた。また樹状突起成長期におけるフィロポディアの動態をタイムラプス観察し、解析した。さらにフィロポディア形成を制御する分子をターゲットとし、方向制御に関与しうるか探索した。
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