研究課題
本研究の目的は、染色体高次構造変化を介して遺伝子発現調節を行うコヒーシンの機能低下が、中枢神経回路形成に及ぼす影響を明らかにすることである。中枢神経回路形成の過程では、遺伝子発現が厳密に調整されている。この過程に働く遺伝子は多数に及ぶため、包括的に遺伝子発現を調節する因子が分化制御に重要な役割を担う。申請者は、クロマチンループの形成を介して、包括的に遺伝子発現を調節すると推察されているコヒーシンに焦点を当てた。ヒトのコヒーシンの機能低下により引き起こされるコルネリア・デ・ランゲ症候群 (CdLS)では、精神遅滞や自閉症様行動を伴う。これは、コヒーシンの機能が、中枢神経回路の形成に重要であることを示唆している。しかしながら、中枢神経系発達期において、コヒーシンの遺伝子転写発現機能の破綻が疾患に繋がるという、直接的な根拠は未だ示されていない。申請者は、コヒーシンの機能低下が遺伝子の転写調節に変化を及ぼし、中枢神経回路の形成が障害されるのではないかと考えた。本研究では、コヒーシンの機能低下が染色体高次構造に変化をもたらし、中枢神経回路形成を障害するという仮説を検証することを目的とした。申請者はCre-loxPシステムを用いて、中枢神経系においてコヒーシンの機能が低下したマウスを作成した。コヒーシン機能低下によって、中枢神経回路形成が障害されると共に、不安様行動の異常な亢進が認められた。また、コヒーシンの機能が低下したマウスの脳内では、野生型と比較して複数の遺伝子発現変動が認められた。上述の結果を論文発表した。
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J Exp Med
巻: 214 ページ: 1431-1452
10.1084/jem.20161517