研究課題
前頭前皮質は社会や環境の影響を大きく受け、ストレスへの感受性も高い。前頭前皮質の神経回路成熟は思春期を経て完了するため、思春期の経験や生育環境が大きく影響するが、その実態は不明な点が多い。我々は成体マウスの社会挫折ストレスを用い、単回ストレスは内側前頭前皮質(mPFC)のドパミンD1受容体サブタイプを活性化しmPFCの錐体神経細胞の樹状突起やスパインを造成してストレス抵抗性を増強すること、反復ストレスはmPFCドパミン系の機能低下やmPFCの錐体神経細胞の樹状突起萎縮を誘導し情動変化を促すことを見出した。本研究では、ドパミン受容体サブタイプによるmPFC神経細胞の機能形態変化の分子機序を明らかにすると共に、思春期でのmPFCの神経回路成熟におけるドパミン系の役割を調べ、神経発達異常やストレスに起因する精神疾患の病態解明に迫る。本年度は、単回ストレスによりmPFCでドパミンD1受容体依存的に発現が変化する軸索ガイダンス分子や細胞接着分子のストレス抵抗性への関与を検討した。各遺伝子に対する人工miRNAを培養神経細胞に導入し、当該遺伝子の発現が抑制されることを確認した。当該遺伝子に対する人工miRNAを発現するアデノ随伴ウイルスをマウスのmPFCに注入し、反復社会挫折ストレスに供して社会忌避行動など情動変化を調べた。これによりストレス抵抗性に関与する新規標的分子を見出しつつある。思春期の神経回路成熟でのドパミン受容体サブタイプの関与を検討するため、Drd1aおよびDrd2のfloxマウスと神経細胞種選択的にCreERT2を発現するマウスとを掛け合わせ、時期特異的にD1受容体およびD2受容体を欠損するマウスを作出した。
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Molecular Psychiatry
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10.1038/mp.2017.177