研究実績の概要 |
本研究は、出来事がどのような文脈で起きたかに関する記憶である出典記憶のうち、時間的文脈の記憶を調べる課題である時間順序識別記憶課を用いて、大脳記憶ネットワークにおける前頭葉の果たす役割の解明を目的としている。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により同定された課題遂行中に活動する脳領域(Osada et al., PLOS Biology, 2015)に対して、領域の神経活動と行動との直接的な因果関係を調べた。具体的には、神経活動不活性化を薬理学的介入で行い、介入による課題遂行への影響を検証した。薬理学的不活性化の予備実験を行い、本番実験を1頭のサルにおいて行った。 大脳記憶前頭葉ネットワークにおける上記の介入実験を行うとともに、課題遂行中におけるfMRI実験から大脳記憶ネットワークの階層性について検証し、成果を2016年7月の国内学会で発表した。また、メタ記憶の大脳ネットワークのfMRIによる同定および神経活動不活性化による介入の効果について報告した共同研究の成果は学術雑誌Scienceに掲載された(Miyamoto, Osada et al., Science, 2017)。さらに、fMRIを用いた脳ネットワーク分析を、ヒトを対象とした研究にも適用し、成果の発表を学術雑誌(Hirose, Osada et al., Frontiers in Human Neuroscience, 2016)、国際学会(Neuroscience 2016など3件)に行った。 なお、当初の研究計画では、神経活動抑制型の光活性化タンパク質をウイルスベクターを用いて導入し、留置型剣山型光ファイバプローブを使った広域大脳皮質へのレーザー光照射による神経活動抑制を予定していたが、予備実験で検討した結果、技術的困難が解消できないため、薬理学的介入による神経活動抑制を行うよう研究計画を変更した。
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