研究実績の概要 |
本研究は、どのような文脈で出来事が起きたかについての記憶(出典記憶)のうち、時間的文脈の記憶を調べる時間順序識別記憶課を用いて、大脳記憶ネットワークにおける前頭葉の果たす役割の解明を目的としている。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により同定された課題遂行中に活動する脳領域(Osada et al., PLOS Biology, 2015)に対し、神経活動不活性化を薬理学的介入で行い、介入による課題遂行への影響を検証した。昨年度に引き続き、2頭のサルにおいて介入実験を行った。 大脳記憶前頭葉ネットワークにおける上記の介入実験を行うとともに、未知の出来事を「未知」と判断するメタ認知に関わる脳領域ネットワークのfMRIによる同定および神経活動不活性化による介入の効果について報告し、この研究成果は学術雑誌Neuronに掲載された(Miyamoto, Setsuie, Osada and Miyashita, Neuron, 2018)。さらに、fMRIを用いた脳ネットワーク分析を、ヒトを対象とした研究かつ皮質下領域である視床下部にも適用し、視床下部の種々の核をfMRIにおいて生きたままの状態で機能的に同定する方法を開発し、その上グルコース摂取後の核の活動変化を計測することに成功した。この成果を学術雑誌(Osada et al., Neuroimage, 2017)、国際学会など(第40回日本神経科学大会など3件)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の技術的手法の変更を受け、ムシモル(GABAA受容体アゴニスト)を用いて、神経活動抑制をする薬理学的介入を行い、課題遂行への影響の検証についての実験を引き続き行った。時間順序識別記憶課題遂行中のfMRI実験により同定された前頭葉領域に対して薬理学的介入を行い、課題遂行への影響を検討する実験を2頭のサルで進めた。課題の遂行成績への影響を調べ、影響が出ることが認められた。薬理学的介入実験でのデータ取得は完了しており、現在論文発表の準備中である。 上記の出典記憶を司る大脳ネットワークへの介入実験を行うとともに、(1) 未知の出来事を未知と判断することについてのメタ認知に関わる脳領域・ネットワークのfMRIによる同定および神経活動不活性化によるメタ認知能力への影響の検証(Miyamoto et al., Neuron, 2018)、 (2) ヒトを対象とした研究かつ皮質下領域である視床下部にも適用し、ヒト視床下部の種々の核を生きたままの状態でfMRIにより機能的に同定する手法の開発・グルコース摂取後の核の活動変化の計測(Osada et al., Neuroimage, 2017など)といったようにfMRIによる脳ネットワーク分析手法の適用の幅を広げてきている。
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