研究実績の概要 |
本研究は、どのような文脈で出来事が起きたかについての記憶(出典記憶)のうち、時間的文脈の記憶を調べる時間順序識別記憶課を用いて、大脳記憶ネットワークにおける前頭葉の果たす役割の解明を目的としている。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により同定された課題遂行中に活動する脳領域(Osada et al., PLOS Biology, 2015)に対し、光遺伝学的手法による介入を当初は予定していたが、技術的困難により手法が変更となり、ムシモル(GABAA受容体アゴニスト)を用い、神経活動抑制をする薬理学的介入実験を行うこととなった。課題遂行中のfMRI実験により同定された前頭葉領域に対して薬理学的介入を行い、2頭のサルで実験を進めた。課題遂行への影響を調べたところ、神経活動抑制により課題遂行に影響が出ることが認められた。 上記の出典記憶を司る大脳ネットワークへの介入実験を行うとともに、(1) 反応抑制機能におけるヒト大脳ネットワークから頭頂葉領域を新たに同定し、経頭蓋磁気刺激法(TMS)による介入により、課題遂行への因果的影響を検出(Osada et al., Journal of Neuroscience, 2019)、(2) 皮質下領域のヒト視床下部の種々の核を生きたままの状態でfMRIにより機能的に同定する手法を開発し、グルコース摂取後の種々の核の活動変化を計測(Osada et al., Neuroimage, 2017)、(3) メタ認知に関わるサル脳領域・ネットワークをfMRIにより同定し、神経活動不活性化によるメタ認知能力への影響を検証(Miyamoto et al., Science, 2017; Miyamoto et al., Neuron, 2018)などといったfMRIによる脳ネットワーク分析手法の適用の幅を広げ、研究成果を報告してきた。
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