研究課題
DD(Destabilizing Domain:不安定化ドメイン)システムを用いた時期特異的な神経興奮制御系の確立を目指し、「HuC pro-DDTeTX」メダカを作成した。この個体では、幼若神経特異的に発現することが知られているHuC遺伝子のプロモーター制御下で、DDと神経興奮抑制に働くテタヌストキシンとを融合させたDDTeTXが発現する。DDは低分子化合物であるTMP(トリメトプリム)を投与することで安定化することから、TMP依存にTeTXが機能し、神経興奮が抑制されることが期待される。当該遺伝子組換え胚において、TMP投与群とTMP非投与群とでその後の発生状況を比較したところ、孵化率においては大きな影響は検出されなかった。しかしながら、孵化直後の運動性における異常を示す個体(その場で回り続ける、沈んだまま浮くことが出来ない)の割合はTMP投与群において非投与群よりも有意に多いという結果が得られた。この結果は、DDシステムを用いた時期特異的な神経興奮抑制系がワークしたことを示唆している。また、配偶者防衛行動に関与する遺伝子の探索を目的として、イソトシン受容体2の変異体を作製した。以前の実験ではイソトシン受容体2の発現は脳で検出されなかったが、条件検討の結果発現していることが確認されたためである。CRISPR/Cas9法を用いて作成した変異体は第一エキソンに4bpの欠失が生じており、フレームシフトによる機能欠損が期待される。現在ホモ変異体を育成中である。
3: やや遅れている
2017年9月に北海道大学にメダカ水槽飼育施設を立ち上げたが、飼育環境の整備が予定通り進まなかった。これまでの所属機関との水質の違いが主な原因であると考えられるが、その結果、遺伝子組換え個体作製用の受精卵の入手が困難であったり、稚魚が成魚まで生育できず死亡してしまい、進捗が遅れた。
配偶者防衛に関与することが明らかになっている遺伝子のプロモーター下流でDDTeTXが発現するメダカを作成する。イソトシン受容体2変異体の行動実験を行う。
新規のメダカ飼育システム水槽導入後、水質が安定しなかったために個体の生育が予定より遅れてしまった。遺伝子組換え個体や変異体のジェノタイピングにはゲノムシーケンスが必要となるが、その外注費用として翌年度に使用する。
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Zoological Letters
巻: 4 ページ: ー
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