昨年度に作製中であったイソトシン受容体2変異体を完成させ、配偶者防衛行動の試験を行った。結果、当該変異体オスは正常オスと同程度の優位性を示し、配偶者防衛行動における異常は検出されなかった。よって、メダカにおいて配偶者防衛行動はイソトシン受容体2ではなく、イソトシン受容体1の活性化を介して誘起されることが明らかになった。 また、イソトシン受容体1のプロモーター下流にDD(Destabilizing Domain:不安定化ドメイン)とTeTX:CFP(神経興奮抑制に働く、テタヌストキシンと蛍光タンパク質を融合させたもの)を融合させたタンパク質を発現させるメダカの作製を行い、系統の確立に成功した。当該個体を用いることで、低分子化合物であるTMP(トリメトプリム)の存在下においてのみ、イソトシン受容体1が発現する神経細胞の興奮を抑制させ、かつその神経をラベルすることができるようになった。 さらに、イソトシン受容体1の脳における発現パターンをin situ hybridizationにより明らかにすることが難しかったため、当該遺伝子座に蛍光タンパク質をノックインしたメダカを作出し、タンパク質レベルで発現解析をすることを可能とした。従来の遺伝子組換えを行わない個体を用いた抗体染色では、標的遺伝子と似た構造を持つ遺伝子(今回の場合ではイソトシン受容体2)も同時に染色してしまう可能性が高かかったが、本手法によりイソトシン受容体1が発現する神経のみを可視化した。
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