研究課題/領域番号 |
16K18371
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
定金 理 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90446261)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 霊長類 / 2光子顕微鏡 / マーモセット |
研究実績の概要 |
覚醒個体での2光子カルシウムイメージング法はこれまで特にマウスを使った実験で使用され、動物の感覚、運動、認知機能と多細胞活動の関連を調べる研究に貢献している。この方法がより人間に近い霊長類に適用可能となれば、神経科学の発展に大きく寄与することが期待される。筆者を含むグループはこれまでに、霊長類のモデル動物であるマーモセットにおいて、遺伝的にコードされたカルシウム指示薬(Genetically encoded calcium indicator)を発現させ、麻酔下の条件において多細胞活動をイメージングすることに世界に先駆けて成功した。当研究の目的は、覚醒下のマーモセットから2光子カルシウムイメージング法を用いて多細胞活動を記録する方法を開発、確立することである。 平成28年度は、覚醒下での2光子カルシウムイメージング法にとって重要な頭部固定具の改良を行うとともに、動物を頭部固定条件下に馴致を行った。マーモセットは眼前に置いた視覚刺激呈示用のディスプレイを自由視し、赤外カメラを用いたアイトラッキング法によってマーモセットの視線位置を推定した。自由視条件はマーモセットの視線位置を固定しないために解析が困難になるが、より自然に近い条件での脳機能を解析できる利点があると考える。マーモセットの1次視覚野にGCaMPを強く発現させ、覚醒下個体から2光子カルシウムイメージング法によっておよそ300x300micronの範囲から約100個の神経細胞の視覚応答を観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
覚醒下マーモセットに2光子カルシウムイメージング法を適用するには、麻酔下での条件と比較して特に動物の動きによるイメージング面の揺れの問題を克服する必要があった。そのため、強固に頭部を固定でき、かつ覚醒下の動物を容易に固定することができる固定具を製作した。固定具は固定用のブロックと、それを支持する支持棒や支柱からなる。また、動物を顕微鏡下に頭部固定される条件に慣らすことも重要だった。さらに我々の実験系ではマーモセットの行動指標として眼球運動を採用しており、例えばタッチパネルやレバーなどの動物の比較的大きな動きを伴う行動と比較して、イメージングへの影響が少ないことがこの行動指標の利点の1つだと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに開発した技術を用いて、覚醒下マーモセットから2光子カルシウムイメージングを行ってた細胞活動を記録し、解析を行う。標的領野は視覚野および前頭前野である。行動としては眼前においたディスプレイに視覚刺激を提示し、マーモセットに自由視させる。赤外ガメラを用いてアイトラッキングを行う。 視覚野の実験では、アイトラッキングの情報からマーモセットの視線位置を推定し、記録中の神経細胞の受容野に提示されていた視覚刺激と細胞活動を解析することで、各細胞の受容野構造とそれらの受容野の大脳皮質上での配置を解析する。 前頭前野の実験では眼球の運動方向に関連した細胞活動を検出し、視覚野での実験と同様にそれらの細胞活動の大脳皮質上での配置を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた対物レンズを比較的安価なものに変更したことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
イメージング、動物の行動関係、動物の頭部固定関係の機材購入に充てる予定である。
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